2μm帯赤外線フォトニック結晶レーザーの発振に成功

京都大学高等研究院(京大KUIAS)と旭化成エレクトロニクス(AKM)は3月12日、2μm帯赤外線フォトニック結晶レーザー(PCSEL:Photonic Crystal Surface-Emitting Laser)の発振に成功したことを発表した。

同成果は京大KUIASの野田進 特別教授、工学研究科 附属光・電子理工学教育研究センターの石﨑賢司 特定准教授、井上卓也 准教授、メーナカ デゾイサ 教授らの研究グループとAKMによるもの。詳細は2026年3月15日~18日にかけて開催される「第73回 応用物理学会春季学術講演会」で発表される予定だという。

構造の最適化により2μm帯での発振に成功

PCSELは、京大で発明・実証された半導体レーザーで、フォトニック結晶による光制御機能を利用することで、従来の半導体レーザーと比べて小型ながら高指向性・高輝度・狭帯域を同時に実現できる点を特徴としている。今回、京大が蓄積してきたフォトニック結晶レーザーに関する学術的知見と、AKMが有する化合物半導体技術を組み合わせた共同研究として、PCSEL構造の最適化を進めた結果、2μm帯でのレーザー発振に成功したという。

  • フォトニック結晶レーザー(PCSEL)の構造

    フォトニック結晶レーザー(PCSEL)の構造 (出所:京大/AKM)

今回実現した2μm帯赤外線PCSELは、発振領域サイズが直径200μmのデバイスで、発光スペクトル測定では、波長約2.2μmに鋭いレーザー発振ピークが観測されたとするほか、出射されたレーザー光のビームパターンは極めて狭い拡がり角が示され、PCSELの持つ高指向性が実証されたとする。さらに、高分解能観察から、ビーム形状がドーナツ状であることも確認されているが、これは円形で対称性の高い格子点形状を採用したフォトニック結晶構造に起因するためで、両者は今後、フォトニック結晶構造を発展させていくことで、単峰状を含む多様なビーム形状に制御することが可能になることが期待されるとコメントしている。

  • 開発された2μm帯赤外線PCSELのレーザー発振特性

    開発された2μm帯赤外線PCSELのレーザー発振特性。(a)が発光スペクトル、(b)がビームパターン (出所:京大/AKM)

ヘルスケアや環境モニタリング、LiDARなど幅広い領域での活用に期待

波長2μm帯の赤外線光は、これまで赤外線LEDが主に用いられてきたが、光強度や波長幅の制約から、生体内物質測定や呼気ガス分析など、より高輝度・狭帯域な光を必要とする用途への適用には課題があり、小型で量産性に優れる2μm帯レーザーの実現は、こうした制約を克服する技術として期待されているとのことで、研究グループでは、想定される応用領域として、ウェアラブルデバイスを用いた生体内物質の非侵襲センシングや呼気中のアセトンなどのガス成分の検知を活用した健康モニタリング、CO2やCH4などの温室効果ガスを対象とした高感度な環境モニタリング、目への安全性(アイセーフ性)が求められる高性能LiDARや次世代通信への適用可能性などを挙げている。

なお、研究グループでは今後、2μm帯PCSELの研究開発をさらに加速させていき、より高度なフォトニック結晶構造の採用を含めた光源構造の最適化を進めることで、高指向性・狭帯域・高輝度動作の実現を目指すとしており、そうした取り組みを通じてヘルスケアや環境モニタリング、通信、LiDARといった分野での応用可能性を検討し、次世代光センシング技術の進展に貢献しきたいとしている。