富山大学は3月9日、「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」のデータを用いて、同一の母親から生まれた第1子と第2子のきょうだい2117組を対象に、生後6か月および12か月時点の発達状況を比較した結果、生後6か月時点で、第2子は第1子と比べて「ASQ-3質問票」による発達指標の得点が低い傾向が見られ、きょうだい間の差は生後1年以内から観察されることを明らかにしたほか、第2子では保護者の関わり得点も低い傾向が見られたと発表した。
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生後6か月時点で、第2子は第1子と比べ発達指標の得点が低い傾向が見られ、きょうだい間の差は生後1年以内の早期から観察されることが判明。また、第2子では保護者の関わり得点も低い傾向が見られた。(出所:富山大プレスリリースPDF)
同成果は、富山大 学術研究部医学系 公衆衛生学講座の土田暁子助教らの研究チームによるもの。詳細は、米国医師会が刊行する臨床医学からヘルスケア政策まで医療全般を扱うオープンアクセス学術誌「JAMA Network Open」に掲載された。
きょうだいの出生順位が発達差に与える影響とは?
長子はしっかり者、末っ子は社交的など、出生順位による性格や能力の差はよく耳にする話だ。先行研究では、第1子の学力が高く、一部の身体的・認知的指標で有利な傾向が複数の大規模研究で示されている一方、第2子以降は運動・スポーツ面で有利な可能性が指摘されているが、アウトカムや対象集団によって一様ではない結果が出ていた。
本来、同じ両親を持つきょうだいは遺伝的に酷似しており、DNAが全能力を決定するのであれば、その能力差は小さくなるはず。それにも関わらず出生順位によって差が生じるならば、その背景には何らかの環境要因があると考えられる。
だが、出生順を入れ替えた比較は不可能な上、非血縁者間の比較では、「第1子」「第2子」という属性そのものを比較することは可能であるものの、家族背景を厳密に揃えることが難しい。そこで研究チームは今回、同じ母親から産まれたきょうだい関係がある第1子と第2子に限定し、出生順位によって発達に差が見られるのかどうかを検証したという。
対象は、環境賞が2010年度から全国約10万組の親子を対象に実施している長期間の大規模出生コホート調査であるエコチル調査の参加者だ。同調査は、胎児期から小児期にかけての化学物質ばく露が子どもの健康に与える影響を解明することを目的としている。
今回の研究では、約3年間の参加勧奨期間中に複数回参加した母親から生まれた、2117組のきょうだいが抽出された。生後6か月および12か月時点の精神神経発達状況が着目された。また、第1子と第2子の間で保護者の関わりの度合いに差があるのかどうかも併せて検証された。
発達評価には、コミュニケーション、粗大運動、微細運動、問題解決、個人・社会性の5領域についての評価を保護者が回答するスクリーニング質問票「ASQ-3」が用いられた。解析にあたっては、家庭の社会経済的背景や養育方針など、きょうだい間で共通する安定した要因の影響を可能な限り排除できる「母固定効果モデル」が採用され、、出生順位による差が検討された。
そして解析の結果、生後6か月の時点では、第2子は第1子と比べASQ-3の全領域で得点が低い傾向が見られたとする。差の大きさは領域ごとに異なるが、特に個人・社会性の領域で比較的大きな差が観察されたとした。生後12か月では、微細運動および個人・社会性の領域では差が残ったものの、コミュニケーションや問題解決では差は縮小し、統計学的に明確な差はなくなったという。
また保護者の関わりについては、遊びや読み聞かせ、屋外活動などの頻度をまとめた指標を用いて評価が行われた。その結果、こちらの得点も、第2子では第1子と比べて低い傾向が見られたとする。これらの結果は、出生順位に関連する小さいながらも一貫した発達差が、生後1年以内という極めて早い時期から観察される可能性を示唆しているとした。
出生順位による発達差については、これまで主に学童期以降を対象とした研究が主だった。今回の研究は、乳児期という早い段階においても、きょうだい間で差が観察される可能性が示された点に特徴があるという。第2子で保護者の関わりが減る傾向が見られたことは、親の時間や注意がきょうだい間で分散する「資源希釈仮説」と整合するとしている。
一方、生後12か月で一部の差が縮小したことについては、家庭内の知的環境やきょうだい間の相互作用が関係している可能性があり、「コンフルエンス・モデル理論」と部分的に整合している可能性があるとする。今回の結果から、きょうだいは遺伝的背景を多く共有しているにも関わらず、それでもなお一定差が見られたことから、出生順位に伴う何らかの環境要因が発達に影響している可能性が考えられるとしている。
ただし、今回の研究は保護者による回答に基づく観察研究であり、主観による認識の差などが反映されている可能性は否定できないとのこと。さらに、乳児期に観察された差が長期的な発達に及ぼす影響は、今後の追跡研究を待つ必要があるとした。
また、今回の成果は統計学的な傾向が示されたものであり、個別の家庭において常に第1子の発達が良く、第2子の発達が悪い、あるいは第2子に対する親の関わりは常に少ないといったことを断定する結果ではない点に注意が必要だという。
研究チームは今後、こうした差が成長と共にどのように変化するのか、また背景にある具体的な要因について詳細に検討していく必要があるとしている。

