ブリヂストンと東京都杉並区(以下、杉並区)は3月5日、グリーンスローモビリティ運行事業において空気充填が不要な「AirFree(エアフリー)」を活用する実証実験を開始することを発表し説明会を開いた。

両者はグリーンスローモビリティとAirFreeに関する連携協定を2月20日に締結している。この協定の下、杉並区のグリーンスローモビリティ運行事業にブリヂストンのAirFree技術を活用し、事業開発の促進を図るとともに、資源を有効活用し廃棄物を削減する循環型社会を目指す杉並区の振興と発展にも寄与する。

  • AirFreeを装着したグリーンスローモビリティ

    AirFreeを装着したグリーンスローモビリティ

空気が不要なブリヂストンの次世代タイヤ「AirFree」

ブリヂストンは2008年より、空気充填の要らない次世代タイヤ「エアフリーコンセプト」の研究開発を進めている。第1世代製品は、空気なしで「安心安全に荷重を支えること」「リサイクル可能であること」に挑戦。通常のタイヤでは空気が担う、荷重を支える機能を硬く強固な素材・構造を組み合わせたタイヤが開発された。

第2世代ではモビリティの多様化に合わせて、「安心安全に荷重を支えること」「リサイクル可能であること」に加え、「乗り心地」といったタイヤ性能の向上にも取り組んだ。デジタル技術の適用範囲を拡大した上で、ゴム空気入りタイヤ技術の知見を活用することで、硬く強固な素材とひずみを分散させる構造を開発し、人とモノの移動へのニーズに対応可能とした。

2023年に開発された第3世代では、より高度なシミュレーション技術や、多様な使用環境を想定した構造設計により、強くてしなやかな素材とひずみを制御し適切にひずませる構造へと進化している。

また、従来の製品機能に加えて、「社会価値の提供」に挑戦し、安心安全かつサステナブルな技術で「地域社会のモビリティを支える」をミッションとして社会実装に向けた公道実証を開始した。

AirFreeは空気の代わりにリサイクル可能なスポーク形状の熱可塑性樹脂で荷重を支えるため、パンクの心配がなく、資源生産性の向上とメンテナンスの効率化を実現している。さらに、スポーク部分には薄暗い時間帯においても視認性を高める「Empowering Blue(エンパワーリングブルー」を採用した。

  • 実証で使用する第3世代のAirFree

    実証で使用する第3世代のAirFree

グリーンスローモビリティでの「AirFree」の有用性

グリーンスローモビリティとは、時速20キロメートル未満で公道を走る電動車を活用した移動サービスを指す。環境負荷を軽減しながら、地域内のコミュニケーション創出につながると期待される。

AirFreeは地域社会のモビリティを支えることをミッションに、高齢化や過疎化、労働力不足といった地域交通に関する課題の解決に資するため、グリーンスローモビリティ事業を支援する。

ブリヂストンは2025年1月に滋賀県東近江市、2月に富山県富山市、11月に久留米市とAirFreeの実証実験に関する連携協定を締結。同年11月には富山市で実証実験を実施した。

杉並区では誰もが気軽で快適に移動できる社会の実現を目指し、杉並区地域公共交通計画の下で、移動の選択肢を拡充するための動きが進められている。気軽で自由な外出を促し、回遊性が高いことから、グリーンスローモビリティに関する取り組みも注目される。

実証が行われる荻窪エリアは、荻外荘公園、大田黒公園、角川庭園のいわゆる荻窪三庭園などがあることから、駅周辺の回遊性向上や、高齢者の移動手段の確保を目的として、グリーンスローモビリティの活用に積極的だ。

杉並区の交通企画担当課長を務める石森健氏は「AirFreeはリサイクル可能な素材による資源の有効活用や廃棄物削減に寄与すること、パンクしないため運行の継続性が高まること、視認性の向上により安全性を確保できることといった特徴を備えるため、実証への協力を決めた。こうした取り組みが、区の目指す持続可能な公共工事の実現やゼロカーボンシティの実現に資するものだと期待している」とコメントしていた。

  • 杉並区 都市整備部管理課交通企画担当課長 石森健氏

    杉並区 都市整備部管理課交通企画担当課長 石森健氏

また、ブリヂストン 新モビリティ事業部門長の太田正樹氏は「今回の実証では、都市部の住宅街ならではの歩行者の多い環境、密な運行スケジュール、多くの利用者など、富山市の実証とは車両タイプも使用環境も異なる。AirFreeのさらなる価値検証を進められることを期待したい」と話していた。

  • ブリヂストン 新モビリティ事業部門長 太田正樹氏

    ブリヂストン 新モビリティ事業部門長 太田正樹氏

実証期間は3月5日から同31日まで。モビリティへのAirFree装着により、乗り心地などについてどのように感じられたかを把握するためのアンケート調査を実施する。大人・子どもともに1乗車100円(未就学児は無料)。現金の他に交通系ICカードや二次元コードなど一部キャッシュレス決済に対応。

  • 杉並区 石森健氏、ブリヂストン 太田正樹氏、ブリヂストン 探索事業AirFree開発推進部長 岩淵芳典氏

    (左から)杉並区 石森健氏、ブリヂストン 太田正樹氏、ブリヂストン 探索事業AirFree開発推進部長 岩淵芳典氏