東京大学(東大)は2月16日、「トリケラトプス」に代表される植物食恐竜「角竜類」の化石形態をCTスキャンデータも用いて詳細に現生爬虫類と比較することで、化石には直接残らない鼻の軟組織の配置や発達の程度を初めて包括的に推定することに成功し、特にトリケラトプスなどの派生的なグループにおいて固有の解剖学的特徴が存在することを解明したと発表した。

  • 今回推定されたトリケラトプスの鼻の軟組織

    今回の研究で推定されたトリケラトプスの鼻の軟組織。神経血管系や鼻腺などの配置の推定に成功した(出所:東大 総合研究博物館Webサイト)

同成果は、東大 総合研究博物館の多田誠之郎特任助教、国立科学博物館 生命史研究部の對比地孝亘研究主幹、薩摩川内市 甑ミュージアムの石川弘樹学芸員、我孫子市鳥の博物館の脇水徳之学芸員、福井県立大学 恐竜学部の河部壮一郎教授、同・大学大学院 生物資源学研究科 生物資源学専攻の坂根広大大学院生らの共同研究チームによるもの。詳細は、米国解剖学会が刊行する広範な解剖学を扱う学術誌「The Anatomical Record」に掲載された。

極端に特殊化した角竜類の鼻に新たな仮説

後頭部から伸びた襟飾りの「フリル」や巨大な角など独自の形態を持つトリケラトプスは、中生代ジュラ紀に出現して白亜紀に繁栄した角竜類の代表格だ。角竜類は当初、中型犬程度の体格しかない小型種だったが、進化の過程でトリケラトプスのような大型種も出現。これまで、その研究は主にフリルや角に焦点が当てられてきた経緯がある。

一方で、顕著な特徴である巨大な「骨鼻孔」を含む鼻の領域は、極端に特殊化が進んでいたため、他系統との比較が難しく、解剖学的な理解が不十分なままだった。そこで研究チームは今回、網羅的な角竜類の化石標本の観察に加え、現生爬虫類との詳細な比較を通じて、化石には残らない鼻の器官の包括的な推定を試みたという。

今回の研究ではまず、トリケラトプスの頭骨の一部をCTスキャンで撮影し、内部構造から神経血管系のパターンが復元された。その結果、従来はその有無が不明瞭だった「鼻腺」や「鼻涙管」といった鼻の主要な器官について、その存在と配置の推定に成功したとする。

神経血管系に関しては、派生的な角竜類において頭骨の変形に伴い、パターンが変化していることが判明した。具体的には、「眼神経血管束」が鼻孔周辺や「吻端(ふんたん)」に優位に分布するなど、このグループにしか見られない固有の配置を持っていたことが明らかにされた。

  • 鼻の神経系パターンの推定

    (左)CTスキャン撮影を行ったトリケラトプスの左上顎骨と、三次元構築した内部の管や空洞。(右)現生爬虫類との比較から推定された、派生的な角竜類における鼻の神経分布パターンを推定したもの。(出所:東大 総合研究博物館Webサイト)

さらに、鼻腔内において、現生動物では鳥類とほ乳類のみが持つ「呼吸鼻甲介」と呼ばれる構造が確認された。これは、陸上脊椎動物で最大級となる角竜類の巨大な頭部の温度を調整する役割を担っていた可能性があるという。呼吸鼻甲介は、鼻腔内部に突き出した複雑な形状の突起であり、渦巻き状やT字型などの構造を採用して表面積を増やすことで、鼻の周囲を走る血液を呼気によって冷却する(温度調節する)機能があると考えられている。この構造は、体内の代謝によって一定の体温を維持する「内温動物」である鳥類とほ乳類が、それぞれで独立に獲得したものと考えられている(ただし、現在は鳥類は一部の恐竜の子孫とされており、恐竜から引き継がれた可能性も考えられる)。

今回の研究成果は、これまで他の恐竜類と比べて知見が大きく不足していた角竜類の吻部に関する基礎的な解剖学的情報を提供するものだ。角竜類の頭部が果たした機能や進化プロセスの解明に向け、今後の研究に大きく貢献することが期待されるとしている。