現代産業において、半導体はもはや単なる電子部品の域を超え、国家の安全保障や経済を左右する戦略物資へと変貌を遂げた。特に中国にとって、先端半導体の自国生産強化は経済成長の維持のみならず、米中対立という巨大な地政学的荒波を生き抜くための生命線となっている。

“脱米国化”を加速させる中国、中心的な企業とは?

中国が半導体製造の強化を急ぐ最大の狙いは、米国による輸出規制の強化に対する抵抗力を強めることにある。第1次トランプ政権以降、米国は先端半導体や製造装置の対中輸出規制を強化し続けており、特に近年ではAI向け半導体の供給網に対する監視を一段と厳格化している。

このような外的圧力に対し、中国は挙国体制を敷いてばく大な政府補助金を投じ、外国技術への依存を断ち切る“脱米国化”を加速させている。かつてのグローバルな分業体制から離脱し、設計から製造、封止・検査に至るまでを自国で完結させる垂直統合型の供給網構築をめざす動きは、まさに地政学的な防衛策そのものだ。

中国国内の供給網において、中心的な役割を担うのがファウンドリ最大手・中芯国際集成電路製造(SMIC)と、通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)だ。SMICは、最先端の露光装置(EUV)の入手が困難な状況下にありながら、既存の装置を高度に運用する技術革新により、7nm(ナノメートル)プロセスの量産を実現し、さらに5nm、そして2026年を見据えた3nm世代への挑戦を続けている。

ファーウェイは、傘下のハイシリコンを通じて設計能力を維持するだけでなく、国内の製造パートナーと連携し、制裁下でも最新スマートフォン向けのチップを供給し続けている。これら主要企業の動向は、西側の制裁が中国の歩みを止めるどころか、かえって国内のサプライヤー同士の結束と技術的な「自力更生」を促している現実を浮き彫りにしている。

先端領域での苦戦が報じられる一方で、製造装置やレガシー半導体と呼ばれる成熟プロセス(28nm以上)の分野では、中国の存在感は圧倒的になりつつある。北方華創(NAURA)や中微半導体(AMEC)といった国内装置メーカーは、エッチングや成膜の工程で急速にシェアを伸ばしており、国内ラインでの国産化率は劇的に上昇した。

“半導体自給率70%”めざす中国の今と未来

地政学的観点から特に注視すべきは、電気自動車(EV)や産業機器に不可欠なレガシー半導体において、中国が世界の生産能力の大半を握ろうとしている点にある。先端品で中国を封じ込める米国に対し、中国は汎用品の供給網を支配することで、世界経済に対する強力な交渉カードを握ろうとしている。

中国政府は、かつて2015年に発表した「中国製造2025」において、半導体自給率70%というきわめて高い目標を掲げていた。現実には、外資系企業の生産分を除いた純粋な国内自給率は依然として低い水準にあるが、製造装置の自給率は2025年までに当初の想定を上回るペースで進展している。

2026年に向けて、中国はAIブームに伴う高帯域メモリ(HBM)や先端パッケージング技術の内製化に注力している。そして技術的孤立を、資源(重要鉱物)の輸出規制というカウンターと組み合わせることで、独自の技術要塞を築き上げようとしている。もはや半導体は経済の問題ではなく、国家の意志がぶつかり合う主権の象徴となっているのだ。