日立ソリューションズ・クリエイト、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)、九州工業大学(九工大)の3者は1月22日、画像認識AIを活用した鶏卵の卵内雌雄判別技術(ふ化前に雌雄を判別する技術)を共同開発し、ふ卵3日目に卵を傷つけることなく雌雄の判別が可能になったと明らかにした。
AIモデル活用で早期の雌雄判別を実現
SDGsに関する意識が高まる昨今、世界では“アニマルウェルフェア”の観点から、オスのひよこの“淘汰”が課題視されている。食用卵を生産できるのはメスの鶏に限られることもあり、現状では年間約66億羽のオスのひよこがふ化直後に淘汰されているとのこと。そのため課題解決に向けて、ふ化前に雌雄を判別する卵内雌雄判別技術の開発が各所で進められているという。
特に、ふ卵(受精卵が発育するために必要な温度・湿度・回転を与えること)を開始してから痛覚が生じるとされる13日目まで、つまりふ卵8~12日目に雌雄判別を行う技術がEUを中心に実用化されているといい、より高い水準のアニマルウェルフェア実現を見据えた取り組みが進んでいるとする。
そうした中、日立ソリューションズ・クリエイトと農研機構は2019年、鶏卵のふ卵早期に雌雄判別を行う共同実験・開発を開始。2023年には九工大も加わり、3者共同での実験・開発を進めてきたという。日立ソリューションズ・クリエイトは画像認識AI技術に、農研機構は鶏卵の生物学的知見に、九工大は光学技術に強みを持つことから、それぞれの長所を活かした開発を行ったという3者は今般、卵内雌雄判別技術の開発に至ったとしている。
雌雄判別にはAIを用いたとする研究チーム。ふ卵早期(2~6日目)から胚およびその周辺に雌雄で異なる特徴が出るという農研機構の研究・知見を活用したという日立ソリューションズ・クリエイトは、卵殻の一部を切除し卵の内部を可視化して撮影した胚とその周辺の画像から雌雄を判別するAIモデルを開発。そして農研機構との共同実験において、鶏卵の撮影画像を学習したモデルが、人間の目では区別できない雌雄それぞれの特徴を捉えられることが判明したとする。
また日立ソリューションズ・クリエイトと農研機構は、AIモデルの雌雄判別実験において、ふ卵3日目に高い精度で雌雄判別が可能であることも解明した。さらに卵を傷つけない雌雄判別を可能にするため、胚と周辺を卵殻越しでも“AIで見える”状態にするべく実験を重ねた研究チームは、適切な鶏卵の設置方法とカメラ・光源の配置・撮影方法を見出したという。
そして3者は、日米で関連特許を取得したという同技術を用いて、高い判別精度を実現するため、鶏卵撮影画像のさらなる鮮明化に挑戦。具体的には、九工大が保有する、光学的な空間周波数調節によってデジタル写真画像の視界不良状態を低減し、見たい部分を強調する画像処理技術を応用することで、鶏卵の撮影画像から卵殻や卵表面を覆っている膜(クチクラ)などの雌雄判別に不要な情報の削減と必要な部分の情報を強調する画像処理を行ったとする。加えて、日立ソリューションズ・クリエイトのAI技術によって処理後画像を基にさまざまな条件下で高精度判別を行える多様な学習データを作成し、それらの画像を学習してAIモデルを生成。その結果、ふ卵3日目の鶏卵を傷つけずに最高97%という高精度で雌雄判別が可能になったとした。
今回の成果を受け、日立ソリューションズ・クリエイトは、今回の新開発技術を標準モデルとして、ふ卵場ごとの環境特徴に対応したカスタマイズモデルの開発と、鶏卵業界との企業パートナーシップ確立を通じ、新技術の実用化を目指すとしている。
