Vicorは1月20日(米国時間)、同社の電源モジュールが加Betterfrost Technologies(ベターフロスト)が手掛ける電気自動車(EV)のフロントガラス向け解氷システムに採用されたことを発表した。
従来のガソリン自動車におけるフロントガラスの霜取りは、内燃機関(エンジン)から発生する大量の廃熱を利用していたが、この手法は熱がフロントガラスの表面に均一に伝わらないためエネルギー効率が低いという課題があった。
また、EVの普及に伴って空調システムがバッテリー駆動へ移行する中にあって、フロントガラスの解氷は従来手法を踏襲していたという。しかし、EVは車内の機密性が高く、窓ガラスの曇りはガソリン自動車よりも大きな課題となっており、特に外気温が氷点下の場合、走行中にフロントガラスが短時間で凍りつき視界を遮る危険性もあることが指摘されているものの、現行のHVAC方式ではエネルギー効率が悪く十分な対応ができない場合もあるという。
EVの窓ガラスの凍結を高速で解消するベターフロストの解氷システム
同社が開発した解氷システムは、独自のアルゴリズムと高電力密度の電力変換モジュールを用いたパルス電力供給技術により、乗用車やトラックの窓ガラスの霜を60秒で溶かすことを可能としつつ、現行のHVACシステムと比較してエネルギー消費量を1/20にまで低減することに成功したソリューション。2015年にダートマス大学のICE(氷・気候・環境)研究室において、「フロントガラスの霜を取り除く際、氷を完全に溶かす必要はなく、氷とガラスが接する界面層の結合を弱めるだけで十分」という発見をもとに開発が進められてきたもの。制御された短いパルス電力をガラス表面に印加することで、氷の下に薄い疑似液体層を形成し、ガラス全体を加熱することなく瞬時に氷を剥離させることを可能としたとする。
具体的には、多くのフロントガラスやサンルーフに用いられている銀や酸化インジウムスズ(ITO)などの低放射(Low-E)導電膜コーティングを電気回路として利用することで実現するという。
この手法により、従来のHVACシステムで約25分を必要としていたフロントガラスの解氷を1分ほどで終えることができるようになったとするほか、ガソリン車との比較ではエネルギー消費量を95%削減することが可能となったとする。また、ガラス表面を均一に温める技術であるため、ひび割れの原因となる熱ストレスも軽減できるとするほか、外気温が氷点下20℃の環境で暖房に必要なエネルギーをが最大27%削減でき、EVの航続距離を延ばすことを可能とするともしている。
-

ベターフロストの解氷システムを用いた際の様子。パルス電力と高電力密度の電源モジュールを活用することで、エネルギー消費を従来の1/20に抑えながら、自動車のフロントガラスの解氷を60秒ほどで完了できるようになるという (出所:Vicor)
さらに、騒音の原因となるブロワーモーターや、大きくかさばるエアダクトを排除することもできるため、快適性の向上や、排除によって生まれた車内スペースの拡充なども実現できるようになるともしている。
48V電力ネットワークの活用で高効率かつ小型の解氷システムを実現
技術的には、48Vを中心とした電力供給ネットワークを活用しており、安全かつ高効率で高速のパルスをガラス表面に印加するため、高電力密度で車載グレードのVicorの800Vまたは400Vから48Vへ変換可能な電圧変換比固定バスコンバータ「BCM6135」が採用されたという。
同製品は電力密度3.4kWh/in3を備えたDC-DCトランスとして動作し、高電圧側に入力された電圧は、モジュールの変換比(Kファクター)に従い低電圧へ変換されることとなる(例:Kファクターが1/16の場合、800Vの入力に対して50Vが出力される)。また、従来のDC-DCコンバータと比較して最大90%の小型化を実現することも可能だとVicorでは説明している。
なお、ベターフロスとは現在、自動車メーカーやティア1サプライヤ、物流・運送業者との協業を進めているとのことで、商用トラックやプレミアムEVの早期導入企業(アーリーアダプター)との連携を深めていき、今後3~5年の間で、EV・ハイブリッド車への導入拡大を目指すとしている。
