米トランプ大統領は1月14日(米国時間)、「1962年通商拡大法232条」に基づき、特定の半導体に25%の追加輸入関税を課す大統領令に署名した。併せてホワイトハウスが大統領令に関するファクトシートを発表したほか、米国税関・国境警備局(CBP)もガイダンスを発表した。
米商務省産業安全保障局(BIS)は2025年4月1日、232条に基づき、半導体などの輸入に対する調査を開始し、商務長官が同年12月22日にトランプ大統領に報告書を提出した。
報告書では、米国における半導体や露光装置などの特定の半導体製造装置の生産能力が国内の需要を満たすには不十分で外国に依存せざるを得ないこと、米国は世界の半導体の約4分の1を消費しているにもかかわらず必要な半導体の約10%しか国内で生産できていないことなどを指摘し、現在の半導体、半導体製造装置、それら派生品の輸入量は、米国の安全保障を損なう恐れがあると結論付けている。これを受けトランプ大統領は、安全保障上の脅威に対抗するため、今回、次の措置を取ると決めた。
- 米商務長官と米国通商代表部(USTR)代表は、半導体などの輸入に伴う安全保障の脅威に対処するため諸外国との交渉を実施・継続し、90日以内に大統領に交渉状況を報告する。大統領は報告を受け、半導体に関連する広範な輸入に対する関税賦課や米国内での製造を促進するためのプログラムを検討する。
- 米国関税分類番号(HTSコード)8471.50、8471.80、8473.30に分類され、特定の仕様を満たす半導体の輸入に対して、米国東部時間2026年1月15日午前0時1分以降、25%の追加関税を課す。ただし、輸入される半導体が米国内のデータセンターでの使用、修理または交換、研究開発用途、スタートアップ企業による使用、非データセンター向け民生用途、公共セクターでの使用を目的とする場合のほか、商務長官が米国の技術サプライチェーンもしくは半導体派生製品の国内製造能力の強化に寄与すると判断する場合は、追加関税の対象外となる。
上記の決定を具体的な製品などに当てはめてみると、諸外国と交渉の上、数か月後に半導体に輸入関税が課されることとなるわけだが、NVIDIAのAI半導体「H200」やAMDの「MI325XM」など特定製品については、中国など米国外に販売する場合、海外の製造委託先(TSMC)から一旦米国に(強制的に)輸入させ、輸入時に25%の関税を賦課したうえで当局の事前輸出審査を課すこととなる(米国のデータセンターなどで消費される場合は輸入関税が課さない)。いわば米国政府への上納金を輸入関税というもっともらしい名目にしたとみることができるだろう。
今回、追加関税の対象となった品目は限定的だが、大統領布告やファクトシートなどでは今後、広範な半導体関連品目に追加関税を課す可能性が示唆されている点に注意が必要である。トランプ政権は、半導体メーカーに米国内での生産強化を促し、海外での製造依存を減らす取り組みを強化している。
中国政府はH200の輸入を不許可か?
なお、米国政府が条件付きで中国へ輸出許可したH200に関して、中国政府税関当局が「中国内への輸入は許可されていない」と職員らに伝えたとロイターが伝えている。中国政府関係者も必要な場合を除きH200を購入しないよう指示したとも伝えられており、中国政府が中国半導体企業の後押しのためにH200を全面輸入禁止にしたいのか、措置の検討段階なのか、措置を米国との駆け引きとして使おうとしているか現段階でははっきりしないとロイターは説明している。