国立天文台は1月8日、アルマ望遠鏡とジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)を用いた詳細な観測により、初期宇宙に存在する3つの「モンスター銀河」がそれぞれ大きく異なる姿を持つことを解明し、これらにおける爆発的な星形成活動が、単一ではなく複数のメカニズムに起因していることが示されたと発表した。
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(上)アルマ望遠鏡とJWSTによる観測画像。アルマ望遠鏡が捉えた星形成領域が青、JWSTによる恒星分布が赤で示されている。(下)それぞれのモンスター銀河のイメージ。(c)国立天文台(出所:アルマ望遠鏡日本語Webサイト)
同成果は、総合研究大学院大学/国立天文台の池田遼太大学院生、同・伊王野大介准教授、北海学園大学の但木謙一教授らを中心とした国際共同研究チームによるもの。詳細は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal」に掲載された。
現在から約100億~120億年前(宇宙誕生から約20億~40億年後)の初期宇宙には、大量の塵に遮へいされつつ、現在の天の川銀河の約500倍という猛烈なペースで星を形成するモンスター銀河が存在していた。これらは、現在の宇宙に見られる巨大銀河の祖先と考えられている。短期間で急成長を遂げたモンスター銀河だが、それほどまでに激しい星形成が維持された要因については、これまで十分に解明されていなかった。
激しい星形成の起源については、最近までは、内部のガスが重力で収縮する「自然発生的な」ものが主要因であると唱えられていた。しかし、モンスター銀河は非常に遠方に存在するため従来の観測では解像度が不足しており、その詳細を調べることは困難だった。さらに電波と赤外線など、複数の波長において同程度の高解像度で同時に観測して比較を行える望遠鏡は限られており、星形成の起源を直接確かめることができていなかった。そこで研究チームは今回、ろくぶんぎ座の方向の初期宇宙に存在する3つのモンスター銀河「AzTEC-1」、「AzTEC-4」、「AzTEC-8」をアルマ望遠鏡とJWSTを用いて詳細に観測したという。
今回の研究では、塵に隠された星形成領域を捉えられるアルマ望遠鏡と、塵の影響を回避して恒星の分布を捉えられるJWSTを組み合わせた観測が行われた。両望遠鏡は、人間の視力に例えると最大で1000に相当する、約0.06秒角という世界最高レベルの極めて高い解像度を共に供えるため、3つのモンスター銀河の星形成領域と恒星分布の直接比較が実現された。
解析の結果、3つのモンスター銀河は、星形成と恒星の分布がいずれも大きく異なっていることが明らかにされた。詳細な分析により、AzTEC-1は「巨大銀河同士の衝突」、AzTEC-4は「内部重力による不安定性(自然発生)」、AzTEC-8は「小型銀河との衝突」と、星形成のトリガーが三者三様であることが判明した。各銀河の特徴は以下の通りである。
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アルマ望遠鏡とJWSTで観測されたAzTEC-8のイメージ。波長の異なるデータを対比させることで、モンスター銀河が持つ「2つの顔」を鮮明に描き出した。(c)国立天文台(出所:アルマ望遠鏡日本語Webサイト)
AzTEC-1では、星形成が銀河全体で活発な一方、恒星は中心部に集中して分布していた。これは、大規模な銀河衝突により、材料となる星間ガスが中心へ流入しつつ、銀河全体でも激しい星形成が誘発されたことを示唆するという。つまり、銀河衝突が星形成のスイッチとなり、爆発的な進化がもたらされた可能性が高いとする。
AzTEC-4では、アルマ望遠鏡が2本の腕を渦巻き構造を捉えた一方、JWSTが観測した恒星分布はなだらかな円盤状であり、強い渦巻き構造は確認されなかった。この構造の解離は大規模な銀河衝突では説明が難しく、銀河内部の重力不安定性によって断片化したガスから星が産まれる「自然発生的」なプロセスが振興していることを示唆するものだった。
AzTEC-8は、アルマ望遠鏡が観測した星形成が中心付近にコンパクトに集中していたのに対し、JWSTによる恒星分布は広範囲に及び、複数の巨大な星の塊を伴っていた。これは、主銀河に比較的小さな銀河が衝突したことで、局所的な星形成が引き起こされた可能性を示しているとした。
一連の結果は、初期宇宙のモンスター銀河が必ずしも同一の過程で形成されるわけではなく、多様なメカニズムが巨大銀河の成長に寄与していることを浮き彫りにした。研究チームは今後、観測サンプルを大幅に拡充することで、巨大銀河形成の多様性を統計的に検証し、天の川銀河を含む銀河の形成という根本的な謎の解明につなげたいとしている。