日本の最東端に位置する南鳥島。小笠原諸島のひとつである同島周辺の海底下には、ハイテク製品に欠かせないレアアースを高濃度に含む“泥”が存在する。その採鉱試験に向け、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の地球深部探査船「ちきゅう」が1月11日に静岡・清水港から出港予定だ。

  • 地球深部探査船「ちきゅう」

    地球深部探査船「ちきゅう」

内閣府・戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の14課題のひとつである「海洋安全保障プラットフォームの構築」(SIP海洋)では、海底鉱物資源として注目される「レアアース泥」の探査、採鉱、製錬等の実証に取り組んでいる。

レアアース泥とは、レアアース(希土類)元素の含有量が特に高い堆積物のこと。南鳥島の排他的経済水域(EEZ)の海底下には、こうした堆積物が存在していることが、これまでの調査研究で分かっている。

今回、南鳥島EEZ海域で実施するレアアース泥採鉱システム接続試験は、国産レアアースの産業化に向けた最初の取り組み。水深約6,000mの海底での同様の試験は、世界でも初の試みだという。試験機材を運び、検証するJAMSTEC「ちきゅう」は1月11日に清水港(静岡・静岡市)を出港し、2月14日に帰港する予定だ。

  • 日本周辺の海底資源の分布

    日本周辺の海底資源の分布

今回の試験の目的は、ちきゅうを用いて南鳥島沖のEEZ海域における水深約6,000mの海底に向け、レアアース泥を採鉱する揚泥管や機器等を接続しながら降下させ、採鉱機を海底に貫入させる一連の作動を検証すること。

採鉱作業中の海洋環境モニタリングでは、海底に「江戸っ子1号COEDO」、環境DNA自動採取装置、ハイドロフォンを設置して採鉱作業中の海洋環境を観測。同時に洋上では、生物光合成反応を利用した汚染監視システムなどの観測装置の性能試験も行う。

この試験は、これまで蓄積してきた技術開発と運用ノウハウを基に、2027年2月の本格的な採鉱試験に向けた最初の取り組みとなる。

  • 採鉱システム概念図

    採鉱システム概念図

  • 採鉱機

    採鉱機

  • 「ちきゅう」での運用に特化した海底設置型観測装置「江戸っ子1号COEDO」。写真は、CK22-02C茨城沖での試験航海の様子

    「ちきゅう」での運用に特化した海底設置型観測装置「江戸っ子1号COEDO」。写真は、CK22-02C茨城沖での試験航海の様子

  • 「ちきゅう」船上のROV(遠隔操作型無人探査機)

    「ちきゅう」船上のROV(遠隔操作型無人探査機)

SIP海洋が開発したレアアース泥採鉱システムは、海洋石油や天然ガス掘削で用いられる「泥水循環方式」に、独自技術を加えた「閉鎖型循環方式」を採用している。海底下での解泥、採泥と海底から船上への揚泥を可能にするもので、閉鎖系で稼働するため、採鉱時に発生する懸濁物の漏洩・拡散を抑止できる点を特長としている。さらに、採鉱に伴う海洋環境への影響を調べるため、SIP海洋で発行した国際標準規格ISOを用いた、海底と船上での同時モニタリングも実施する。2022年8月には、水深2,470mの海底から堆積物の船上までの揚泥を行い、あわせて海洋環境のモニタリングにも成功している。

SIP海洋では、日本の経済安全保障の観点から、先端技術に不可欠な鉱物資源として注目されるレアアースの安定供給を担うサプライチェーンの構築をめざして、南鳥島レアアース泥の資源開発実証に向けた研究を実施。これまで、資源量の把握や、深海からレアアース泥を採鉱するための機器開発、海底鉱物資源開発に不可欠な環境モニタリング技術の開発を進めてきた。

SIP海洋は、今回の試験で得られる成果は「日本のレアアースサプライチェーンの構築において確かな一歩を刻むものになる」としている。