東北大学は、機能性流体を用いた「誘発地震抑制技術」の開発に成功したと発表。地震を起こす断層滑りに“ブレーキ”をかける技術開発の第一歩となる可能があることを示唆している。この成果は、米国地球惑星連合の国際学術誌「Geophysical Research Letters」に、12月19日付で掲載している。
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今回の研究で使った、東北大学 大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センターの「低速摩擦試験機」。サンプルホルダーに模擬断層粉末とSTFを付加したサンプルで実験を行った 出所:東北大学ニュースリリースPDF
誘発地震は、地下への注水や、流体資源の抽出、掘削、ダムへの貯水といった、人為的開発行為によって地下の状態が変わることで発生する。地下に流体を注入するときに断層の応力状態が変わることが原因で、こうした地震の情報は、地下構造の推定など工学的にも利用される。
ほとんどの場合、地震の規模を示すマグニチュードは2以下であり、地上で感じることはないとされるが、ごくまれに被害を伴う誘発有感地震が地上で起きる事例が報告されている。これまで、注入する流体の量を減らすといった対策が試みられてきたが、経済性や技術的な制約から、抜本的な解決策は見つかっていなかった。
東北大学流体科学研究所の研究グループは、「せん断増粘流体」(STF:Shear Thickening Fluid)を、断層を模擬した粉末に付与し、その摩擦特性を実験的に調査。その結果、STFを用いると断層の摩擦特性が変化し、断層滑りを安定化させ、地震の発生を抑制できる可能性を示すことが分かったという。
STFは、流れのせん断応力(あるふたつの平面が、互いにずれるようにすべらせるように作用する応力のこと)が流れの速度勾配に比例しない、粘性係数が一定ではない非ニュートン流体の一種。ダイラタンシー流体とも呼ばれるこの流体は、身近なところでは、片栗粉を水で濃く溶いたものが挙げられる。
STFは、せん断速度の変化量に応じて粘度が変わり、サラサラした状態の時に強く力をかけると、力をかけたところだけが固くなるといった現象を起こす機能性流体の一種として知られる。
研究グループがSTFを用いて摩擦実験を行った結果、岩石粉末だけの場合は地震が起きるが、STFを混ぜると地震にならない安定した滑りに変わることを発見した。STFを用いた誘発地震抑制技術は、地熱発電や、非在来型資源、CO2地下貯留、鉱山開発などで問題となる、誘発地震のリスク低減に役立つ可能性があるという。
将来的には、断層に直接STFを注入することで、より安全な地下資源開発や地震の制御の実現に寄与することが期待され、STFを使ってより安全な地下資源開発を実現できるほか、将来的には地震の抑制技術開発の第一歩となる可能性もあることを示している。
