台湾の半導体ハイテク市場動向調査会社であるTrendForceが2026年のテクノロジー業界が注目すべき10の主要トレンドを発表した。
ファウンドリ、メモリ、AIサーバー、第3世代半導体、エネルギー貯蔵、AIロボティクスなどのコアテクノロジーが中心的だが、その根底からはAIが環境の変化をもたらすという予測が見えてくる。
AI関連の半導体がけん引する技術進化
2026年は、北米の主要CSP(クラウドサービスプロバイダ) による設備投資の増加と世界的なソブリンクラウドプロジェクトの増加に支えられたAIデータセンター建設需要が高まり、AIサーバの出荷が前年比で20%以上増加すると予想されるという。
ただし、AIのリーディングカンパニーであるNVIDIAは、激しい競争に直面することになることも想定されている。競合のAMDがInstinct MI400のフルラックソリューションを投入するほか、北米の主要CSPは自社でのASIC開発を強化している。中国勢も地政学的緊張の高まりから技術の自給自足への動きを強めており、各社独自のAI半導体開発に注力する姿勢を見せている。
AIプロセッサの高性能化に伴ってチップあたりの熱設計電力(TDP)も増加。NVIDIAのH100/H200では700Wであったものが、次世代のB200/B300では1000Wを超えるとされ、対策のためにラックへの液冷システムの採用が進み、2026年までにその採用率は47%に達すると予想されている。
すでにMicrosoftは、熱効率を向上させるためにチップレベルの高度なマイクロ流体冷却技術を導入した。短中期的には、コールドプレート式液体冷却が引き続き主要なソリューションとなり、CDUは液空冷方式から液液冷却方式へと移行していくが、長期的に見ればより詳細なチップレベルの熱管理へと移行していくことが予想されるとする。
また、AI処理のためのメモリ帯域幅とデータ容量の増加ニーズに対応することを目指したHBMと光インターコネクト技術の進化が期待されている。
現行世代のHBMは、シリコン貫通ビア(Through Silicon Via:TSV)を活用した3次元積層によりメモリとプロセッサの距離を短縮し、容量の増大と帯域幅の拡大を実現している。次世代となるHBM4では、チャネル密度とI/O帯域幅の向上により、進化したAIプロセッサの膨大な計算需要にも対応できるようになる。
しかし、モデルのパラメータが兆単位を超え、GPUクラスターが指数関数的に増大するにつれて、メモリ帯域幅が再び主要なパフォーマンスボトルネックとして浮上しており、その対応のためにメモリメーカー各社は、HBMスタックアーキテクチャの最適化、パッケージングとインタフェース設計の革新、そしてロジックチップとの協調設計によるAIプロセッサの帯域幅向上などを進めているが、AIにおけるチップやモジュール間のデータ転送が性能向上に対する制約となることを意味している。
そのため、そうした限界の克服に向けて、コパッケージドオプティクス(CPO)とシリコンフォトニクス(SiPh)が、GPUメーカーやCSPにとっての戦略的な注力分野として台頭するようになってきた。
800Gおよび1.6Tのプラガブル光トランシーバーはすでに量産に入っており、2026年にはより高帯域幅のSiPh/CPOプラットフォームがAIスイッチに導入される見込みである。これらの次世代光通信技術は、高帯域幅かつ低消費電力のデータ相互接続を可能にし、システム全体の帯域幅密度とエネルギー効率を最適化し、AIインフラストラクチャの高まるパフォーマンス需要に対応することを可能にする。
このほか、AIの学習と推論タスクでは、予測不可能なI/O挙動を伴う膨大なデータセットへの迅速なアクセスが求められ、既存のストレージオプションとのパフォーマンス格差が拡大しているため、NANDメーカー各社は、DRAMと従来型NANDストレージの中間に位置するストレージクラスメモリSSD、KVキャッシュSSD、HBFなどの製品タイプへの注力を進めている。また、ニアラインQLC SSDへの注力も近年は進められている。モデルチェックポイントやデータセットのアーカイブといったウォームおよびコールドAIデータストレージレイヤに急速に採用されるようになっているが、背景にはストレージ密度が高く、ビットあたりの保存コストを削減することができるためである。TrendForceは、2026年までにQLC SSDがエンタープライズSSD市場の30%を占めると予測しており、AIインフラストラクチャにおけるストレージ容量とコスト効率の向上における重要性が高まっていることを示している。
さらに、データセンターにおけるサーバラックの定格電力がキロワットからメガワットクラスへと増大するにつれ、電力インフラのアップグレードが迫られるようになっている。業界では、効率性の向上、信頼性の向上、銅線ケーブルの削減、そしてよりコンパクトなシステム設計のサポートを目的として、800V HVDCアーキテクチャの導入が進もうとしている。SiCやGaNといった先進的ないわゆる第3世代半導体は、この移行において重要な役割を果たしており、現在、多くの半導体プロバイダーがNVIDIAの800V HVDCプロジェクトに参加している。
SiCは、データセンターアーキテクチャにおけるフロントエンドおよびミッドステージの電力変換において重要であり、最高電圧と電力負荷を管理してくれる。SiCデバイスは、従来のシリコンパワーデバイスに比べて最大電圧定格が低いものの、優れた熱効率とスイッチング性能が次世代のソリッドステートトランスフォーマ(SST)の開発に不可欠となっている。
一方、高周波特性と高効率特性で知られるGaNは、中間段階および最終段階の電力変換において注目を集めている。TrendForceは、データセンター電源システムにおけるSiCとGaNの採用率が2026年までに17%に達し、2030年には30%を超えると予測している。
求められるAIデータセンターへの安定した電力供給
半導体ではないが、AIデータセンターの電力消費が増大するにつれ、変動したワークロードにより安定した電力の供給が求められるようになっている。そのためエネルギー貯蔵システムは、従来の単なるバックアップ電源という位置づけから、安定した電力供給源としての役割へと変貌を遂げつつある。
TrendForceでは、今後5年間で、AIデータセンターはエネルギー貯蔵システムに大きな変革をもたらすと予想している。従来のUPSによる短時間バックアップや電力品質の安定化に加え、バックアップ電源、エネルギー裁定取引、そして系統サービスを同時にサポートするため、2~4時間といった中長時間の貯蔵システムの割合が増す見通しである。
導入モデルも、集中型のデータセンタレベルのバッテリーエネルギー貯蔵システムから、瞬時に応答可能なモジュール式バッテリーバックアップユニットを組み込んだラックレベルまたはクラスターレベルの分散型アーキテクチャへと進化しており、この移行により、システムの耐障害性とエネルギー効率が向上し、AI駆動型インフラストラクチャのますます厳しくなる電力安定性のニーズにも応えることができるようになるとする。
北米はハイパースケールクラウドプロバイダが牽引する形で、AIデータセンター向けエネルギー貯蔵システムの世界最大市場になると予想されている。一方の中国は、「東のデータ、西のコンピューティング」構想の下、再生可能エネルギーが豊富な西部地域へのデータセンターの進出が進んでおり、エネルギー貯蔵システムと組み合わせたAIデータセンターが大規模キャンパスの標準的なインフラとなることが期待されている。世界全体では、AIデータセンター向けエネルギー貯蔵システムの設置容量は、2024年の15.7GWhから2030年には216.8GWhへと拡大し、年平均成長率(CAGR)46.1%で成長すると予測されている。
次世代の高性能半導体をどう実現するか
半導体業界は現在、2つのトレンドが同時進行している状況にある。1つは、トランジスタ密度の向上を目指した量産での2nmプロセスへの移行。もう1つは、ヘテロジニアス・インテグレーション(異種チップ集積)の進歩を背景としたパッケージサイズの大型化である。このアプローチは、異なる機能と技術プロセスで作られた複数のチップを統合することで、AIやHPCアプリケーションの性能と効率性に対する要求を満たすことを可能にする。
トランジスタ構造は、FinFETからゲート酸化膜がシリコンチャネルを完全に囲むGAA(ゲートオールアラウンド) FETアーキテクチャへと移行。これにより、高性能を維持しながら電流制御が向上することとなる。
一方のパッケージングにおいては、2.5Dおよび3D技術により高密度マルチチップスタッキングが可能になり、相互接続の高速化と消費電力の低減が実現する。これらのイノベーションは、将来のデータセンターやHPCシステムに不可欠である。
TSMC、Intel、Samsungはそれぞれ独自の2.5D/3Dパッケージングソリューションを採用している。TSMCはCoWoSとSoIC、IntelはEMIBとFoveros、SamsungはI-CubeとX-Cubeを採用し、2nm GAAFETの生産拡大に伴い、フロントエンドとバックエンドを統合したファウンドリサービスを提供している。これらの企業にとっての最大の課題は、半導体開発の次の段階において持続的な競争優位性を確保するために、生産能力、信頼性、コスト、そして歩留まりを効果的に管理することである。
急速に進むヒューマノイドロボットの商品化
2026年はヒューマノイドロボットの商品化にとって極めて重要な転換点となる見込みだとTrendForceでは予測している。
世界出荷台数は7倍以上増加し、5万台を超えると予想しており、市場の勢いは、AI適応性とアプリケーション指向の設計という2つの柱を中心に展開すると予想している。
高性能なAI半導体、センサフュージョン、LLM統合によって推進されるAIの進歩により、ヒューマノイドロボットは、その場で学習し、予測できない状況でも柔軟な判断を下せるようになり、行動前の状況認識と推論の新たなレベルに到達することができるようになる。
このトレンドに沿って、2026年の次世代ヒューマノイドロボットは、スペックや器用さを誇示するだけのものではなく、製造物流、倉庫仕分け、検査支援といった特定の業務シナリオに合わせてカスタマイズされ、それぞれがタスク指向の完全な機能を実行できるようになることが期待される。これは、ヒューマノイドロボットがAI主導でアプリケーション重視の産業革命という新たな段階へと正式に移行したことを示すものになるという。
OLEDの進化がけん引するPC/スマホ分野
有機EL(OLED)技術は、さまざまなデバイス分野で大きな変革期を迎えている。
中国と韓国のパネルメーカーが第8.6世代AMOLEDの生産を拡大するにつれ、コスト構造と歩留まりの改善が小型ディスプレイと大型ディスプレイの両方でOLEDの採用を加速させるようになっている。この変化は平均販売価格の上昇にもつながり、ドライバIC、TCON、タッチモジュール、サーマルソリューションといった上流コンポーネントの競争力を強化している。
OLEDは自発光ピクセルを特徴とし、優れたコントラスト、薄型デザイン、そして柔軟なリフレッシュレートを実現する。液晶ディスプレイの厚みと消費電力の物理的制約を克服し、特にAppleが重視する画質と電力効率の両立を実現する。2026年にMacBook Proシリーズに搭載が予定されているOLEDパネルは、プレミアムノートPCにおけるミニLEDからOLEDへの移行を促進する可能性が高い。TrendForceは、AppleのOLED採用を背景に、ノートPC市場におけるOLEDのシェアは2025年までに5%に達し、2027年から2028年にかけて9~12%に増加すると予測している。
一方、Appleは2026年後半から2027年ごろに折りたたみ式スマートフォン(スマホ)を発売する予定で、ハードウェアとソフトウェアの相乗効果、強力なブランド力、そして強固なサプライチェーンを活用することで、市場に変革をもたらす可能性がある。業界の関心は、見た目の魅力から生産性向上とユーザーエクスペリエンスの向上へと移り、折りたたみ式デバイスの全世界出荷台数は2027年までに3000万台を超えると予測されている。
しかしながら、主流への普及には、ヒンジの耐久性、フレキシブルパネルの封止、歩留まり、コスト管理といった課題が依然として存在する。Appleの慎重な製品検証アプローチは、品質とタイミングへの重点を強調しており、折りたたみ式スマホ市場の発展は最終的には技術の進歩と堅牢な製造能力にかかっていることを示唆している。
LCoSからLEDoSへの移行が期待されるXRグラス
Metaが「Ray-Ban Display ARグラス」を発表したが、このARグラスは、AIを日常生活に統合し、人間とAIのインタラクションを変革する情報配信アプリケーションを目指したものである。
現在のXRグラスの多くはLCoS(Liquid Crystal on Silicon)を採用しており、信頼性の高いフルカラー性能と成熟度を実現している。このアプローチは、まだ発展途上のLEDoS(LED on Silicon)技術をサポートし、アクセスしやすく洗練されたユーザーエクスペリエンスを提供することで市場認知度の向上に貢献する。
今後、市場の期待とMetaの製品ロードマップを見ると、より高い輝度とコントラストを提供し、より幅広い用途を可能にするLEDoSディスプレイへと向かうことが想定される。Apple、Google、RayNeo、INMO、Rokid、Vuzixなどの企業がこの技術に積極的に投資しており、その結果、生産コストは急速に低下し、より利用しやすくなると予想される。TrendForceは、2027~2028年までに業界でより高度なフルカラーLEDoSソリューションが実現し、MetaがLEDoSディスプレイを搭載した次世代ARグラスを発売すると予測している。
ロボタクシーが世界的な拡大の兆し
レベル2以上の運転支援システムの普及率は2026年までに40%を超えると予測されており、車両インテリジェンスは電動化に次ぐ自動車セクターの重要な成長ドライバーとなる見込みである。
レベル2技術の普及に伴い、重点はコスト削減へと移行し、コックピット統合型運転支援SoCとコントローラーが2026年に量産開始される見通しである。これは主に中国の中級車市場をターゲットとしたものだが、従来の自動車メーカーも、ADASの標準装備化をさらに推進するため、内燃機関車の車両インテリジェンスの強化を進める見込みである。
一方、ロボタクシー業界はレベル4の自動運転を目指し、世界的な拡大期を迎えている。規制緩和、フリートオペレーターやモビリティサービスプロバイダーの関心の高まり、E2EやVLAアーキテクチャといったAIモデルの進歩が、市場の成長を加速させることが期待される。2026年までに、ロボタクシーサービスは現在の中国と米国という優位性を超え、欧州、中東、日本、オーストラリアで急速に成長すると予想されており、自動運転モビリティの新たな時代の到来が期待される。
