パナソニック オートモーティブシステムズは12月16日、事業戦略説明会を開催し、中期経営目標に対する経営概況とコア事業のキャビンUX戦略、ならびに2027年4月1日付で社名を「モビテラ株式会社」へと変更することを発表した。

  • パナソニック オートモーティブシステムズの新社名とロゴ

    パナソニック オートモーティブシステムズの新社名「モビテラ」とそのロゴ (出所:パナソニック オートモーティブシステムズ、以下すべてのスライド同様)

同社は持続的な成長を目指し、3~4年後のIPOを視野に入れた経営の強化を図っている。そのために重要なのがキャッシュフロー改善による筋肉質な体制への変更。2027年度に2024年度非でEBITDAからCAPEXを差し引いたE-Cを約3倍にすることを目標に掲げており、固定費の削減や材料費の合理化などを進めることで2025年度は目標の達成が視野に入ったという。

  • 重要指標とするE-C目標

    同社が重要指標とするE-C目標

例えば材料費合理化については、各事業部の取り組みを統合するCEO・CPO直轄プロジェクトを推進。サプライヤとの連携強化を進めることでコスト競争力の向上を果たしたという。また、固定費についても業務効率化と人員配置の最適化、工程改善による生産性向上とコスト低減を実現したとするほか、間接人件費についても機能や役割の見直しと最小人員でのスタンドアローン化の推進を図っているとする。

人に寄り添うソリューションで安全と快適なモビリティ体験を実現へ

同社のコア事業はコックピット領域の「コックピットHPC」と移動体験を提供する「モビリティUX」の2つ。このうちモビリティUXの戦略としては、目指すべき姿を「人に寄り添うソリューションで、安心・快適なモビリティUXを創造」と定義。コア技術である「ひと理解ロジック技術」を活用する形でシステム・サービスを提供することで、運転支援ならびに快適空間の実現を目指しているとのことで、2035年度に2024年度比で1.5倍ほどとなる約5000億円の売上高を目指すとする。

  • モビリティUX事業の中長期成長戦略の概要

    モビリティUX事業の中長期成長戦略の概要。コア技術であるひと理解ロジックを活用することで、高度な運転支援と快適な空間の構築を推進するという

具体的なシステムやサービスとしては、ひと理解の知見を核にセンシングやAIアルゴリズムで「移ごこち」を創出することを目指しており、将来的には快適への貢献拡大を見据えつつ、まずは基盤となる安心分野への貢献を目指すという。

そのため、ADAS(先進運転支援システム)の進化に伴い、事故の発生件数そのものは減ってきているが、それでも年間29万件以上発生している。同事業が目指しているのは、そうした既存のADAS領域の一歩先にある、車内外の状態を推定し、危険な状態に車両が陥らないように運転を支援するなど、最適な支援の提供による事故の未然防止。その実現のためには、「ヒヤリハットの先回りサポート」「認識能力サポート」「運手以外の操作からの解放」の3つの視点による価値を、ひと理解ロジック技術を活用して提供していくとする。

  • ADASとモビリティUXの違い
  • ADASとモビリティUXの違い
  • ADASとモビリティUXの違いと、提供できる価値の一部

人の感情まで理解した運転支援の実現へ

さらに、パナソニックとして長年培ってきたAV機器やナビ開発に基づくUX/UIの知見を活用する形で、車内外の状況やドライバーの感情推定を掛け合わせたセマンティックコントロールにより、表面的な情報理解だけでなく、意味や文脈を理解することで高精度な支援を実現することを目指していくともする。

  • ひと理解ロジック技術
  • ひと理解ロジック技術
  • ひと理解ロジック技術のイメージとセマンティックコントロール技術の対応範囲

この実現のためには、運転シーンを認識し、危険の度合いを予測するシーンパーセプション技術や、ドライバーの個性などを認識して運転支援を行う感情パーセプション技術を提供していくことを推進していく。特にシーンパーセプション技術は基礎生物学研究所との共同研究(検証データは東京農工大学提供)で実現した視覚特性モデルにより、多くの危険の中から人が気づきにくい危険だけを抽出し、重点的に知らせるといったことも可能だという。

一方の感情パーセプション技術は、一般的な感情と実際の感情のギャップ分析による個性推定で、ドライバー1人ひとりにパーソナライズされた検知を実現したとのことで、同社代表取締役社長執行役員の永易正吏氏は、「ここまでの感情検知を行えるのは我々だけ」と胸を張る。

  • セマンティックコントロールを実現する2つのパーセプション技術の概要
  • セマンティックコントロールを実現する2つのパーセプション技術の概要
  • セマンティックコントロールを実現する2つのパーセプション技術の概要
  • セマンティックコントロールを実現する2つのパーセプション技術の概要と、価値の提供先のイメージ

3つある社名変更の目的

同社は2024年12月、Apollo Global Managementをはじめとするアポロ・グループがパナソニック ホールディングスより80%の株式を取得したのに合わせて、新たな経営体制に移行した。

今回の社名変更は、そこから1年という節目を迎えるにあたって実施を決定したものとなる。その目的については、「自主自立の象徴」「独自ブランドの確立」「資本・事業の柔軟化」の3つを挙げている。永易氏は新社名について「自主自立の象徴として、ミッション・ビジョン・バリューを体現する社名を自ら創出することに価値があり、戦略や製品を自らの想いで、自らの手で形にするという原点を忘れないということも込めたもの」と説明。将来的なIPOや外部資本の導入を見据え、パナソニックというブランドの制約を外すことで、資本政策の自由度を確保することも含めており、「新社名には強い思いを込めている」(同)とする。

  • 新社名への変更目的

    新社名への変更目的

また、社名のモビテラについては、事業領域である「Mobility」に、「道」を表すラテン語「Iter(イテル)」と 未来を「照らす」という想いを重ねた言葉だと説明するほか、中心にある「i」については、いつも愛を持って人に寄り添う、人を中心としたモビリティを考え続ける企業姿勢を表したものだという。

さらに、頭文字である「M」には、未来を照らすという意志を、ロゴの中央にある「i」には、どんな時も人を中心に考える姿勢を象徴的なデザインとして取り入れたとするほか、コーポレートカラーであるモビテラブルーグリーンについては、すべての人に「移ごこち」よく、という約束を込め、人・街・地球と調和し、ここちよさを感じるカラーとして生み出したとのことで、同氏は、「これらの想いをこめて世界一の移ごこちデザインカンパニーを目指して進み続ける」と宣言した。

なお、社名変更を2027年4月1日とした理由について同社は、Webサイトの変更などを含めたさまざまな準備が必要であり、そうした対応を進める時間を確保したためだとしている。