不足する半導体関連の設計人材
コロナ禍の供給不足に端を発して注目されるようになった「半導体」。日本での半導体製造に向けては、既存の半導体メーカーによる投資の後押しに加え、海外ファウンドリの誘致や国策ファウンドリの設立など、先端からレガシープロセスまで拡充が進められている。しかし、その一方で、半導体に関する設計に携わる人材はというと、実際のところは不足傾向にあるといえる。
SEMICON Japan 2025併催で半導体設計に関するサミットが開催
政府も半導体設計人材の育成に向けていろいろと動き出しているが、半導体に関わる「設計」という業務は、半導体の回路のみならず、そうした半導体のダイが搭載されるパッケージの回路、半導体パッケージ(チップ)が搭載されるプリント基板回路、そしてシステムそのものの設計まで幅広く見る必要がある。そうした幅広い半導体に関わる設計人材をどう確保していくべきか。何を設計するか、どうビジネスと戦略的に連動させていくかなど、抜本的な課題を考えるヒントになる議論をする場としてSEMIは、2025年12月17日~19日にかけて開催する「SEMICON Japan 2025」の併催という形で「ADIS(Advanced Design Innovation Summit)2025」を実施する。
-

半導体の設計というと半導体の機能を司る回路設計のイメージが強いが、実際のデバイスとして活用するパッケージ、そしてシステムを動作させるために必要となるプリント基板の設計まで含まれる (資料提供:SEMI/図研)
こうした半導体関連の設計の重要性は、AppleがSoCやモデムを自社開発した製品を活用し、その上にOSやソフトウェア、サービスなどを展開していることを考えるとわかりやすい。また、最近のAIデータセンター周辺の動きも、NVIDIAのGPUは確かに高い性能を提供するが、処理する領域が決まっていたりする場合、例えばGoogleはTPUを独自に設計(製造はファウンドリ)し、それを活用して消費電力を抑えながら、高いAI処理を実現したとしている。Google以外にもMicrosoftやMeta、そして中国は米国政府の輸出規制があるという点もあるがHuaweiなどがそれぞれ独自のAI半導体を開発している。これらはいずれも、主に自社の提供するサービスの付加価値を高めることを目的としたものであり、半導体に関する設計が自らできるという強みを示した事例と言える。
こうした自社が提供したいサービス/ソフトウェア、そのベースとなるハードウェア、そのハードウェアの中心コンポーネントとなる半導体を組み合わせることで付加価値を出すという流れは今後、日本でも高まることが期待されている。しかし、実のところ、日本も90年代や2000年代には、自社製品の性能向上や差別化のために自前で半導体の回路設計やパッケージ設計、プリント基板設計を行っていた時代があり、そうした時代から半導体業界に携わってきた人たちがいるものの、その後の日本の半導体産業の凋落に伴い、若手が少ない状況となっている。こうした現状をSEMIジャパンでは危惧しており、学生を含む若い半導体人材に「興味と関心」を持ってもらうことがADISの1つの目的となっている。
また、将来的には設計の標準化や、日本の半導体産業の今後に向けた提言なども行っていきたいという。「今後の半導体サプライチェーンを考えた場合、製造だけではなく、設計にも投資が進むことを望む必要がある」とする。
ADISは、そうしたさまざまな設計を取り巻く環境を認識する場所をなることを目指すという。特に会期2日目の12月18日は、EDAにおけるAI活用に向けたパネルディスカッションや、半導体設計のためのデジタルツイン、組み込み/IoT業界向けIP活用の話として、Arm、SiFive、IPユーザーであるアクセルの3社の講演のほか、理化学研究所のスーパーコンピュータ「富岳」を開発した富士通の開発プロジェクト担当者が、今だから振り返れる当時の開発現場における半導体設計から基板設計、システム全体の開発マネジメントなどの連携をどうやって実現したのか、といった秘話を語るといったさまざまな講演が予定されている。
人材育成にも注力
また、人材育成という観点の取り組みも2種類開催する。1つ目は会期初日の12月17日に開催される「The Game」。ランダムに構成されたチームごとにテーマが与えられ、それに見合った半導体をデザインするカードゲーム。システムとして必要な仕様をもとにした半導体の設計フローの理解、トレードオフの関係にある機能、面積、消費電力、コストについての理解などを進めることができるという。2つ目は会期2日目に開催される「SEMI Circuit Design Speed Contest」。有明工業高等専門学校CDEC(Circuit Design and Education Center)の協力を得る形で、全国の高等専門学校の生徒を対象に2つの半導体設計を疑似体験できるツールを活用した競技だという。
ADIS実行推進委員会 副委員長で図研の専務執行役員、CTO、技術本部長の仮屋和浩氏は、「EDAのツール群は顧客にとって、どう変わっていく必要があるのか。これまで業界は前工程(ファウンドリ)、後工程(OSAT)、プリント基板(EMS)と別れていたがために、実のところ、横の交流があまりなかった。チップレットの登場でこの仕組み自体が限界にきている。しかし、そのチップレットも熱の問題であったり、基板とパッケージの重さの兼ね合いであったり、さまざまな問題を解決する必要が生じている。CADの高性能化はもちろんだが、半導体設計の情報をパッケージ側にも提供して設計に活用するなどといった協調が求められるようになっている」と、ADISを通じて、そうした業界の横の連携を高めていく必要性を強調する。




これまで前工程、後工程、プリント基板の横のつながりはそれほど強くなかったが、パッケージを2.xD/3D化することでさまざまな課題の解決できるようになることが期待されるようになり、それぞれの設計情報を密に連携させていく必要がでてきたのが現状であり、活用されるCADを中心とするツール群もそうしたニーズに合ったものへと進化していく必要が生じている (資料提供:図研)
また、「未来の姿は、最終製品であるシステムがどのように性能を発揮するのかを、システム側に人間がチップレットパッケージの中にどういったチップをどのように配置するのかを考える必要がでてくる。そのためには、ツール側としては協調性を高めていく必要がある」とするほか、AIや仮想環境を活用して複雑化するシステム開発への対応が求められてくるようになることを踏まえ、デジタルツインやPLMまで、半導体素子レベルから都市全体のレベルまで、どうやって複数のレイヤをつなげ、かつスムーズにそれをツールとして活用できるようにしていくかといった問題を考えていく必要があるとしており、ADISを通じて、そうした半導体を取り巻く設計という領域の動きを感じてもらえればとしている。


