2022年11月30日、OpenAIが「ChatGPT」を公開してから3年が経過した。この3年の間、米国株式市場はAIを中心とした投資熱によって大きく様変わりし、新たな勝者と敗者が明確になった。AI関連企業への資金集中が加速し、株式市場の構造そのものが変化している実態が浮き彫りになった、としている。

NVIDIAはじめ、テック大手7社が市場全体の上昇を牽引

ChatGPTのリリース以降、S&P500指数は64%上昇した。その原動力はAI技術への期待だ。中でもNVIDIA、Microsoft、Apple、Alphabet、Amazon、Meta、Broadcomの時価総額上位7社が、指数全体の上昇分の約半分を占めているという。

「すべての強気相場には支配的なテーマがあり、今回の強気相場の支配的なテーマはテクノロジーとAIだ。そしてそれは、ChatGPTのローンチとともに本格的に始まった」と語るのは、Truist Advisory Servicesで最高投資責任者を務めるKeith Lerner氏だ。

2022年には、利益減少と金利上昇で打撃を受けていたテック大手だが、AIの登場によって市場の期待は一変した。低迷期からのスタートだったからこそ、AI関連の成長がより劇的に映ったとの見方も紹介している。

AI投資ブームの最大の受益者は、半導体メーカーのNVIDIAだ。同社のGPUはAI処理に最適化されており、市場のニーズにフィット、ChatGPT公開以降の株価上昇率は実に979%に達した。これはS&P500構成銘柄の中で3番目に高いパフォーマンスだという。

NVIDIAの業績も驚異的だ。年間売上高を見ると、2022年末に270億ドルだったのが2025年には2000億ドルを超える見込みだという。今後、12カ月の純利益予想は1700億ドル超で、これはS&P500企業の3分の1の予想利益を合計した額を上回る規模とのこと。

だが競争環境には変化の兆しもある。11月25日には、MetaがGoogleのAIチップ(TPU)に数十億ドルを投じる協議を進めているとThe Informationが報じた。この報道を受けてNVIDIA株は下落し、Alphabet株は上昇するなど、市場の反応は敏感だった。

予想外に急騰したエネルギー企業

AIインフラ競争のもう一つの受益者は、電力供給企業だ。AI処理に必要なのはGPUだが、それを動かすためには膨大な電力が必要だ。この需要を背景に、米大手発電事業者のVistraの株価は3年間で620%上昇し、S&P500で4番目の好成績を記録した。NRG EnergyとConstellation Energyもそれぞれ250%以上上昇している。

電力需要の拡大は、新たなエネルギー源への投資も促している。原子力スタートアップのNano Nuclear EnergyやOkloの株価は急騰し、Constellation Energyは2019年に閉鎖されたスリーマイル島原子力発電所の再稼働計画に対し、米政府から10億ドルの支援を獲得したようだ。

まだ上昇の余地があると見るのは、Tortoise Capital Advisorsのポートフォリオマネージャー、Matt Sallee氏だ。エネルギー関連銘柄について「需要面でのビジネスへの影響の大きさと、その需要の持続性が十分に評価されていない」と述べている。

AIに脅かされる企業群

AI熱狂の陰で、大きく株価を下げている企業群も存在する。AIによる代替リスクが高いと見なされたソフトウェアベンダー、人材派遣会社、広告代理店などだ。

UBSがまとめた、こうした「AI脅威銘柄」の株価は、ChatGPT公開以降3分の1以上下落している。一方、ハイテク株中心のNasdaq 100指数は同期間に2倍になっており、明暗が分かれた格好だ。

例えば、顧客サポートソフトウェアのLivePersonとオンライン教育のCheggはそれぞれ97%下落、人材サービスのManpowerGroupとRobert Halfは65%以上下落している。

Fulton Breakefield Breenniman リサーチディレクターのMichael Bailey氏は「テクノロジーの波と製品サイクルが非常に速く到来しているため、これらの企業は適応できなかったのかもしれない」と分析している。

このような勝者と勝者になれなかった企業が出始めるなど、AI関連銘柄への資金集中は、市場構造そのものを変化させている。先述のように、S&P500の時価総額上位7社の指数全体に占める比率は約35%、これは2022年後半の約20%から大幅な上昇だ。この集中度は前例のない水準だという。

Cetera Financial Groupの最高投資責任者、Gene Goldman氏はBloombergに対し、警笛を鳴らす。少数の銘柄群が苦戦し始めた場合、市場全体へのリスクが大きいという懸念からだ。4年目に入るAIブーム、2026年はどのように変化するのか。11月25日付のBloombergが報じている。