国立高等専門学校機構(高専機構)とパナソニック ホールディングス(パナソニックグループ)は11月5日、生成AIなどのソフトウェア技術とものづくりの融合が求められる将来を見据え、新たな人財育成を目的とした包括連携協定を締結した。

  • 包括連携協定締結式の様子

    包括連携協定締結式の様子

両者は同日、都内にて包括連携協定への調印式を実施。併せて行われた説明会では、国際的に注目を集め海外展開も始まっている“KOSEN”の強みと、パナソニックグループとの産学連携によって生まれることが期待されるシナジーについて語られた。

世界的に注目を集める“高専教育”

さまざまな業界で深刻な労働力不足が叫ばれる現代。“ものづくり”は今でも社会を支える重要な産業のひとつではあるものの、ハードウェア中心だった従来の姿から、ソフトウェアとの融合によるソリューション型の価値提供へと、急速に変容している。特に昨今では、生成AIの登場などが数多の変革を生み出しており、これからグローバル市場に飛び出すものづくり人財には、それらの最新技術を使いこなすことが求められる。

そうした中、国際的な競争の中で活躍できる技術力を有し、さらに訪れる変化にも対応できる能力を持つ人財を輩出する教育機関として期待されるのが、高専だ。国立の高等教育機関として全国に51校が存在する高専には、現在約5万人の学生と約3500人の教員が在籍。5~7年間にわたって一貫した技術者教育を行うことを目的とし、実験・実習を重視した専門教育を早期段階から行うことで、卒業時には大学卒業時と同程度以上の知識・技術を身に着けるカリキュラムが設定されているという。

  • 国立高専の概要

    国立高専の概要(提供:高専機構)

またこの高専については、海外諸国からも注目が集まっているといい、タイやモンゴル、ベトナムなどでも“日本型高等専門学校制度”としてシステムが輸出され、高度技術人材の育成に貢献しているとする。さらに9月21日には、アフリカ初の事例として「エジプト・日本高専(EJ-KOSEN)」も開校しており、“KOSEN”での教育はグローバル規模で広がりを見せている。

  • 国立高専機構の谷口功理事長

    国立高専機構の谷口功理事長

産学連携のさらなる強化へパナソニックと連携

そんな中で高専機構では、より実践的な教育に繋げるためにも産学連携での教育プログラム構築に注力しているとのこと。そして今般同機構では、民間企業と共に中長期視点で相互の人財育成を目指す初めての試みとして、パナソニックグループと連携したカリキュラム開発に着手することを決定した。

創業者である松下幸之助が残した「物をつくる前に人をつくる」との言葉のもと、主要のメイン事業だけでなく人財育成にも力を入れるパナソニックグループでは、これまでにも全国各地の高専と各地の生産拠点などが手を取る形で産学連携教育に協力してきたといい、蓄電池を生産するパナソニック エナジーの徳島工場や、ライティング事業の中核生産拠点である新潟工場など、各地でシナジーが生まれてきたという。

そして今般では、そうした連携の効果をさらに拡大させるため、パナソニックグループ全体としての取り組みを始動した。具体的には、生成AIやデータ活用をはじめさまざまな事業を展開する同社グループのものづくり技術・ノウハウを活用し、現場課題の解決力や新たな価値創出スキルを体系的に習得できる実践的カリキュラムの共創を目指すとする。

また、講演や教材の提供、専門人財の派遣などの支援を行うことで、教育内容の高度化や質的向上にも貢献していくとのこと。特に人財については、産学連携による育成の検討を進めるための下地作りとして、パナソニックグループと高専機構の両者からメンバーを集めたワーキンググループを2026年度中にも設置し、クロスアポイントメント制度の活用なども通じて、“単発で終わらせない”ための継続的な検討を行っていくとした。さらにこの取り組みについては対内外に向けて継続的に発信を行っていく予定だとし、影響力の拡大に向けて絶えず動き続けていくとしている。

  • 両社の包括連携で目指す姿

    高専機構とパナソニックグループの連携で目指す姿(提供:パナソニックグループ)

“高専で学ぶ意味”を実感できるカリキュラム開発へ

「我々としては、もちろん教育を受けた高専生がパナソニックグループの一員になることはとてもうれしいものの、それを最終的な目標に掲げているわけではない」と語ったのは、自身も高専出身だというパナソニック オペレーショナルエクセレンス リクルート&キャリアクリエイトセンターの坂本崇センター長。「とはいえ“パナソニック”という存在は知ってもらえるようにしたい」とする背景として、「高専で学んだ内容が実際に使われている先のひとつとして、パナソニックという企業名を通すことで、より具体的にその意義を実感してもらいたい」とした。

  • パナソニック オペレーショナルエクセレンスの坂本崇氏

    パナソニック オペレーショナルエクセレンス リクルート&キャリアクリエイトセンターの坂本崇センター長(出所:)

またパナソニック ホールディングス グループCHROの木下達夫氏は、「高いレベルで高専生どうしが切磋琢磨し、その能力を高め合っていく姿は、パナソニックグループとして大事にしている考え方にも合致する。そういった面から見ても、今回の高専機構との取り組みは両者にとってとてもいいものになると考えている」と語った。

  • パナソニック ホールディングス CHROの木下達夫

    パナソニック ホールディングス グループCHROの木下達夫氏