半導体露光機大手の成長戦略が分かれてきた。半導体市場はAIがけん引役となっているが、それ以外は電気自動車(EV)の低迷もあって盛り上がりに欠けている。
最大手の蘭ASMLは、主軸のEUV(極紫外線)露光機の売れ行きが鈍化。稼ぎどころの中国市場も、2026年は厳しくなりそうだ。ニコンは高付加価値のArF液浸機(ArFi)の売れ行き不振が続き、打開策を迫られている。堅調な業績を見込むのは、後工程向け露光機に強いキヤノン。しかし、後工程市場にはASMLとニコンが共に参入したことで、競争激化が予想される。
急拡大の後工程にASMLも参入。中国市場の変化に注目
EUV半導体露光機の唯一のベンダーであるASMLは、プロセス微細化でしのぎを削るTSMCやサムスン電子向けに出荷台数を増やしてきた。しかし2025年後半に入って潮目が変わり、7〜9月期のEUV機販売台数は9台と、前四半期の11台を下回った。
受注予約54億ユーロのうち36億ユーロはEUV機とはいえ、売り上げに占めるEUV機の構成比は38%と、4〜6月期の48%から大きく下がった。2025年の売上げは前年比15%増、粗利率52%を見込む同社にとって影響は少なくない。次世代高開口度(NA=0.55)機も、滑り出しは芳しくないようだ。米関税政策もあって先行きの不透明感から、半導体大手が設備投資を後ろ倒ししていることが背景にある。
一方特徴的なのが、最先端ではないArFi機の販売台数が4〜6月期から7台増えたことと、最大の出荷先が米国からの先端機器導入規制を受けている中国ということ。中国向け売上げ構成比は42%と前四半期の27%から激増している。台湾向けは同30%、韓国向けは同18%。日本向けはわずか1%だった。注目すべきは、特需後の中国向け売上げは今後減少し、2026年は激減も予想していることだ。
こうしたなか、ASMLは初の3次元パッケージ向け露光機「TWINSCANXT:260」を出荷した。従来比最大4倍の生産性をもつi線(波長365ナノメートル)スキャナーであり、スループットは毎時270枚としている点が特徴だ。
ニコン回復は数年後? 生成AI向け需要で勢いづくキヤノン
露光機を扱う精機事業が4〜9月期、前年比で14%減収になったニコンも後工程へ新規参入し、チップレットに適した大面積基板向けに独自のデジタル露光機「DSP-100」の受注をはじめた。主力の半導体露光機の方は大手ユーザーである米インテルの経営難が響き、高付加価値のArFiが同期に1台も売れなかった。ArF機も1台だけに止まったことが減収の主因だ。
ASMLのEUV販売が伸び悩んでいることはニコンにも影響しており、「EUVコンポーネントの売れ行きが落ちた」という。半導体露光機の通期販売見込みは8月時点から5台下方修正して29台、このうちArFiはゼロ台(前年実績3台)のままだ。
インテルの稼働率がなかなか上がってこないとあって、足下では中国主体にアジア市場の開拓に注力している。AI分野以外の半導体市場は回復が遅れ気味だが来期には売上げ増につながりそうだ。2026年春に発表予定の中期経営計画で柱になるのは、足を引っ張っている半導体まわりの立て直しである。戦略の目玉はASML互換ArFiの開発であり、中長期的に大市場を狙えるとみている。
5期連続の増収増益を見込むキヤノンは、半導体業界の投資先送りにあって販売計画を下方修正しながらも1〜9月期、露光機事業は堅調に推移した。メモリーやパワー半導体向け需要は弱かったが生成AI向けの需要は力強く、業界標準といえる後工程向け露光機を主体に7〜9月期は前年比6台増の54台を販売した。光源別ではKrF(フッ化クリプトン)7台、i線47台である。10〜12月期には80台の販売をめざすキヤノンは、後工程では今後ナノインプリント装置のメモリーやロジックプロセスへの適用も考えている。7〜9月期は成膜装置も広帯域メモリー(HBM)などのAI向けに好調だった。
12月通期予想販売台数は241台(前年233台)。内訳はKrF機が50台(前年51台)、i線機が191台(同182台)。先行きの不透明感から増産などの設備投資がずれ込んでいる7〜9月期を底に来年にかけて市況は盛り返すとみている。





