楽天グループと日本HPは11月11日、「Rakuten AI」のデスクトップ版の導入に関して協業する戦略的提携に合意したと発表した。
来春から夏にかけて、日本国内で発売されるHPほぼすべてのデバイス(ゲーミングパソコンを除く)にRakuten AI for Desktopがプリバンドルされる予定だ。プリインストールではなく、インストールショートカットを設置する。
「Rakuten AI for Desktop」はベータ版が提供中のモバイル版Rakuten AIの機能に加え、PC上のCPU/GPU/NPUでRakuten AI 7B LLMをフルに活用したオンデバイスAIとして動作し、コスト低減とセキュリティ向上を目指す。LLMの動作にはNPU 40TOPS以上が要求されるので、事実上Copilot+PCに限定されるといってよいだろう。
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左から、日本HP 代表取締役 社長執行役員 岡戸伸樹氏、楽天グループ株式会社 専務執行役員 Group CAIDO(チーフAI & Dataオフィサー)AI & Dataディビジョン グループシニアマネージングエグゼクティブオフィサーのティン・ツァイ氏
オンデバイスで動作する「Rakuten AI for Desktop」
説明会では、楽天グループのティン・ツァイ氏が「私たちの使命はAIの力で人間の創造性を拡張することです。AIエージェントがすべてのサービスに統合され、体験を向上させるだけでなく、お客様を力づける新しい製品を生み出す未来を思い描いています」と楽天がAIの力によって人間の創造性を拡張するために、全サービスにAIエージェントを統合するAI Nizationを推進していると語った。
ツァイ氏は、「AIは信頼できるパートナーであり、インターネットが使えない状況でも業務や生活が止まらないよう、クラウドだけでなくオンデバイスでも動作するよう設計した」とRakuten AI for Desktopを紹介した。
ハイブリッドAIこそがAIの未来のあるべき姿
日本HP 代表取締役 社長執行役員 岡戸伸樹氏は「楽天との提携は2010年から開始しており、当時のビジネス責任者は私だった」と意外な関係を紹介。今回、AIという戦略的領域でアライアンスを発表できるまで関係が深まったことを誇りに思っていると述べた。
「クラウドAIとオンデバイスAI、これを融合させたハイブリッドAIこそがAIの未来のあるべき姿(岡戸氏)」と、今回の戦略的提携はハイブリッドAI実現のために両社の技術的強みで役割分担をしたという。
楽天は日本語に根ざしたAIやLLMに強みを持ち、多数の楽天IDと楽天経済圏の深いユーザー基盤を持つ。
日本HPはパソコンの構成部品であるIntel/AMD/Qualcommと深い関係を構築しているほか、Windows製品を提供していることでマイクロソフトとも連携している。このように、同社は長年CPUやOSなどの技術基盤上で製品開発をしている実績と個人からSME、エンタープライズまで幅広いチャネルを保有している。
オンデバイスAIは最先端の分野であり、複数のベンダーとの連携や幅広い知識が必要となる。日本HPはすでに多くのAIアプリケーションベンダーとの連携により、エコシステムの構築、技術的知見、実装ノウハウを蓄積。
今回の提携では日本HPが開発アドバイザーとなり、Rakuten AI for DesktopがNPUを最大限活用できるような技術支援を行っているとして、岡戸氏はRakuten AI for Desktop構築に貢献していることをアピールした。
インストール用アイコンに企業はどう反応するか
筆者としては、余計なプリインストールを嫌うコマーシャルPCにインストール用とは言えアイコンが出ることに少々驚いた。フタを開けてみないとわからないが「キッティング時に消せるのか」と、購入を検討している企業から質問が出てくるのではないかという気もする。
また、会場のデモ機は開発途中であり、記者が自由に動かしてよいものではないなど、チラ見せ感が否めなかったが、日本語に強いオンデバイスLLMはビジネスシーンで求められている機能と言える。
オンデバイスAIは鶏と卵の関係と言え、今回の発表でマイクロソフトのCopilot以外の「美味しそうな鶏料理」が垣間見えた。








