2025年ノーベル賞 【私の雑記帳】

2人のノーベル賞受賞

 2025年のノーベル賞に2人の日本人研究者が選ばれた。

 生理学・医学賞の坂口志文さん(大阪大学特任教授)と化学賞の北川進さん(京都大学副学長・特別教授)のお二人。昨年の日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)の平和賞受賞に続く快挙に日本中が沸いた。

 坂口志文さん(1951年=昭和26年生まれ)は、過剰な免疫反応を抑える『制御性T細胞』の発見で免疫疾患を克服する道を拓いたという功績。もっと言えば、「がんは怖い病気ではなく、治せるものだという時代に必ずなる」ということ。がんは治せるものという時代につながる『制御性T細胞』の発見である。

 そういう時代が、20年以内に来るということで、「科学は進歩し続ける」という坂口氏の言葉に、わたしたちも勇気付けられる。

 ロシアのウクライナ侵攻がなお続き、各地で紛争や内紛が起き、人と人が対立し憎しみ合う局面ばかり見せつけられている今日、全人類のためになる研究がずっと続けられてきていることに、救われる思いがする。

幸運は準備された心に…

『多孔性金属錯体(金属有機構造体)』。素人にとって、すぐにはのみ込めない難しい分野で化学賞を受賞の北川進さん(1951年=昭和26年生まれ)。この構造体は、狙った物質を内部に閉じ込める機能を持ち、脱炭素や有害物質の除去など産業界や生活領域でも幅広い応用が期待されている。

 すでに果物の鮮度維持や半導体製造向けで実用化されているのだという。 北川さんの座右の銘は『勁草』。そして、『無用の用』だという。『疾風に勁草を知る』の喩え通り、研究に逆風は付き物だが、学会の中からも、いろいろな声を浴びせられながらも、自分の信念、使命を貫き通し、科学的にそれを立証するまで研究に没頭してきた北川さんらしい座右の銘である。

『無用の用』─。真理を究めることは実に奥深く、深慮の営みだと思うが、北川さんの言葉を借りると、「役に立つものはみんな役に立つし、役に立たないものも役に立つということ」であるという。

 何より、北川さんの言葉で印象に残ったのは、細菌学者ルイ・パスツールが言った『幸運は準備された心に宿る』を心の糧にして、研究を踏ん張り続けたこと。

 データを取り、科学的根拠を積み上げながら、『無用』を『用』に昇華させていった坂口、北川両教授の生き様は、『人口減、少子化・高齢化』が進む日本に大いなる勇気と踏ん張りの大切さを教えてくれる。

慶應義塾大学教授・土居丈朗「トランプ関税の影響は2026年頃から。日本は自国産業の強化を!」