今や経済安全保障の要として、国会のさまざまな政策と切っては切れなくなった半導体産業。そのけん引役であるAIを筆頭に、自動車、産業機器、PC、スマートフォンとなければ生活に支障が出るものばかりに必ずと言ってよいほど搭載されている。
本稿では、市場の成長が続く半導体産業について、注目すべきニュースや技術トレンド、研究成果などをタイムリーにお届けしていく。
今回は、2025年10月18日~10月24日にかけて弊誌TECH+にて注目された半導体関連のトピックスをいくつか紹介する。先週から引き続き、蘭Nexperiaへのオランダ政府の介入に端を発した混乱は、同社の経営のみならず、同社が多くの製品を供給する世界中の自動車産業にも影響を及ぼしつつあり、各国の自動車工業会などが懸念を表明する事態に発展している。その一方で、米国ではIntelが決算を発表。7四半期ぶりに黒字化を果たし、経営再建が進んでいることが示唆された。
政府間協議を実施も解決の糸口が見えず、自動車産業に波紋が広がるNexperiaショック
オランダ政府によるNexperiaの経営への介入は、その後、中国政府がNexperia中国法人が手掛ける製品を輸出禁止にする対抗措置を取るなど、泥沼の様相を見せていたが、10月21日に両政府が第1回目の協議を行ったことを中国政府が声明として出すなど、沈静化に向けた取り組みが進められていることが明らかにされた。ただし、この協議では解決までには至らず、物別れに終わった模様である。
こうした混乱の影響は、Nexperiaの多くの製品が使われている世界各国の自動車産業に波及している。10月16日に欧州自動車工業会(ACEA)が早々に懸念を表明したほか、ドイツ自動車工業会(VDA)も10月21日付で、Nexperiaの半導体供給が滞れば、自動車の減産や生産停止につながる可能性があるとの声明を出すに至っている。
日本でも日本自動車工業会が10月23日付で声明を発表。会員各社のグローバル生産に深刻な影響を及ぼす可能性があるとの懸念を表明した。
業界内外からは、Nexperiaの半導体は代替可能であるとする向きもあるが、実際に自動車メーカーが置き換えを行おうとすれば、人命を守るために求められる製品品質を保証するための検査や、製造工程の確認、場合によっては設計の変更などが必要となるため、短い期間での置き換えは難しいと考えるのが妥当である。
中国政府は、中国の自動車メーカーも影響を受けることを鑑み、Nexperia中国法人による中国国内での供給は認めた模様であるが、こうした動きを受けて、Nexperiaのオランダ本社は、中国法人から調達した製品について品質を保証しないと中国の顧客に伝えているという。コロナ禍の半導体不足の折、偽物の半導体チップを購入してしまったという話が各所から出ていたが、Nexperiaを取り巻くサプライチェーンが正常化しない場合、そうしたNexperiaをうたった偽物が出回るなど、混乱が生じる可能性が高まることが危惧される。
Intelが7四半期ぶりの黒字化を達成
Intelは10月23日、2025年第3四半期の決算を発表し、売上高を前年同期比3%増の137億ドルへと伸ばし、純利益も前年同期の166億ドルの損失から41億ドルの黒字へと益転を果たした。四半期ベースでの黒字計上は2023年第4四半期以来、7四半期ぶりとなる。
課題としていたIntel Foundryの業績が、売上高は前年同期比2%減の42億ドルと微減となったが、営業損失が前年同期の58億ドルの損失から23億ドルの損失へと低減するなど赤字幅の縮小に成功したことが大きく、人員削減や設備投資の見直しによるコスト削減などが寄与したものと推測されている。
同社は、最新世代のプロセス技術「Intel 18A」を採用したAI PC向けプロセッサ「Core Ultra Processor(Series3)」(開発コード名:Panther Lake)の本格普及を2026年初頭から目指した量産を米アリゾナ州のFab 52にて開始。今回の決算でもAI PCに一定の需要が見られるようになっていることに触れており、Core Ultra Processor(Series3)の市場浸透による今後の復活に期待がかかる。

