ReRAMのCiMの大容量化と長期記録を両立
東京大学(東大)は、エッジ機器におけるAI推論で期待される、低電力エッジAI半導体であるReRAM CiM(Computation-in-Memory)の多値記憶による大容量化と10年記憶の両立に成功したことを発表した。
同成果は、同大大学院工学系研究科の竹内健 教授、松井千尋 特任准教授、三澤奈央子 学術専門職員、平田佑亮氏(研究当時:修士課程)、山内堅心氏(研究当時:修士課程)らによる研究グループとヌヴォトンテクノロジージャパンによるもの。詳細は、独ミュンヘンで開催された「IEEE European Solid-State Electronics Research Conference(ESSERC)」にて口頭発表された。
ReRAM CiMの課題
CiMは、メモリと演算器を一体化することで、従来の課題であるメモリのデータ移動に使われる電力を抑えることで低消費電力ながら高い演算性能を実現することが期待される技術。GPUと比べて、電力を1/10以下に抑えることも可能とされており、電力要件が厳しいエッジ分野などにおけるAIの推論処理での活用が期待されている。
しかし、ReRAMを用いたCiMの場合、ReRAMに2ビット以上を記憶する多値記憶化により、CiMのメモリ容量を増加させることができるものの、多値記憶には、ReRAM中の伝導パスを構成する酸素欠陥の拡散により、10年といった長期動作中に、保持しているデータにエラーが生じるという問題があった。このCiMを構成するReRAMのメモリエラーはニューラルネットワークのパラメータのエラーに相当し、AI推論で重要となる積和演算値(MACV)の変動、ひいてはAI推論の精度劣化につながるとされてきた。
補正とハイブリッド構造の採用で大容量と長期記録の両立を実現
そこで今回、研究グループは、データ保持時間をモニタする回路を導入し、モニタしたデータ保持時間に基づいて、メモリ信頼性の劣化に起因するAI推論時の積和演算の変化を補正する手法を提案したとするほか、メモリのエラーにロバストなAI計算の活性化関数(ELU)を採用することで積和演算の変化を精緻に補正することに成功したとする。さらに、AIのパラメータのうち上位ビットを1ビット記憶の2値メモリセル、下位ビットを多値メモリセルに記憶するハイブリッド構造を採用することで、従来の2値記憶のCiMに比べて、多値記憶による大容量化を実現しつつ、10年間にわたる高いAI推論精度を達成したとする。
なお、研究グループでは、今回開発した技術を活用することで、CiMの多値化によるメモリ容量の大容量化と10年間の高信頼性が両立することが可能になり、モビリティ・ロボティクス・ヘルスケア・モバイル応用などへの低電力エッジAI半導体CiMの利用が拡大することが期待されると説明している。

