オキサイドパワークリスタル、Mipox、UJ-Crystal、アイクリスタル、名古屋大学(名大)の5者は9月25日、名大で長年培われた溶液成長法のシーズ技術を基盤としてデジタルツインを活用することで、6インチp型SiC(炭化ケイ素)ウェハ、および6インチ・8インチn型SiCウェハの試作の成功したことを発表した。

  • 6インチp型SiCウェハ)と6インチn型SiCウェハ

    今回試作された6インチp型SiCウェハ(左)と6インチn型SiCウェハ(右)(出所:名古屋大学)

同研究成果は、オキサイドパワークリスタル、Mipox、UJ-Crystal、アイクリスタルの4社に加え、産業技術総合研究所(産総研) 先進パワーエレクトロニクス研究センター、名大 未来材料・システム研究所が参画した共同開発グループによるもの。今回試作されたSiCウェハは、9月14日から19日まで韓国・釜山で開催されたSiCに関する国際会議「ICSCRM(International Conference on Silicon Carbide and Related Materials)2025」にて出展された。

SiCパワー半導体の大口径化に向け大きな前進

SiCは、電気自動車(EV)や鉄道、再生可能エネルギー用インバータなどに用いられる、持続可能な社会の実現に不可欠な次世代パワー半導体材料だ。現在ではそのさらなる普及のため、ウェハの大口径化(6~8インチ)や結晶欠陥の低減による高品質化に向けた研究開発が広く進められている最中。中でも名大は、2019年に溶液成長法による6インチ結晶成長の基本条件を発見するなど、国際的な研究拠点として発展を牽引してきたというが、それでも量産技術への展開は未解決の課題だったとする。

名大を含む6者はこれまで、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業「次世代デジタルインフラの構築」プロジェクトの支援を受け、研究開発を推進してきたとのこと。その中で名大とアイクリスタルは、温度場・濃度場・流れ場の最適制御方針を提示し、膨大な条件を高速シミュレーションによって解析することで最適条件を抽出したという。

さらにその成果に対して、UJ-Crystalの知見と組み合わせることで結晶成長の基本レシピが確立され、加えてオキサイドパワークリスタルが複数台の育成装置を用いて結晶育成を実証するとともに、事業化を見据えた量産プロセスの開発に着手。その結果、6インチp型SiCウェハおよび8インチn型SiCウェハの試作に成功したとしている。

研究チームによると、依然として6500Vを越える超高耐圧領域ではシリコンが主流であるものの、次世代の超高耐圧IGBTを実現するためには、高品質なp型SiCウェハが不可欠とのこと。しかし従来の昇華法ではドーパント制御が難しく、大口径のp型ウェハ製造には大きな課題が残されていたことから、今回開発された革新的な溶液成長法によってこの課題を解決し、p型SiCサンプルを完成させたことが重要だとする。

また今回の成果により、直流送電や大規模データセンター向け電源システムなど、次世代社会インフラを支えるキーマテリアルへの道が大きく拓かれたとしており、今後も6者は引き続き連携することで、量産技術の確立と事業化を推進し、次世代エネルギー・情報社会を支える基盤技術としてのSiC普及を加速させていくとしている。