安藤・間(安藤ハザマ)と名古屋大学(名大)の両者は9月4日、「コンクリーション」化技術を応用して、ひび割れを自己充填して修復し、コンクリートの水密性を高める(透水性能を低下させる)技術を開発したと共同で発表した。
同成果は、安藤ハザマ、名大 博物館館長/大学院 環境学研究科の吉田英一教授、積水化学工業の共同研究チームによるもの。
建築から2000年以上たってもひび割れない建築材料を目指して
原子力発電所から出る放射性廃棄物は、半減期の長い放射性物質が含まれるため、長期的に安定した状態で埋設処分する必要がある。こうした処分施設にはセメント系材料の使用が不可欠だ。このうち、低レベルの放射性廃棄物処分施設では、フライアッシュや高炉スラグといった混和材を用いてひび割れを抑制したり、ひび割れ制御鉄筋の配置でひび割れの幅や本数を制御したりする対策が行われている。一方で高レベルの放射性廃棄物処分施設では、高強度で耐久性のある材料を使用することにより、ひび割れの発生をさらに厳しく抑制することが求められている。
自然界では、海岸近くの堆積岩中に球状の塊であるコンクリーションが見られることがある。これは、生物の遺骸が分解されて生じた炭酸イオンが、海水中のカルシウムイオンが結合して炭酸カルシウムが生成されたもので、国内外で多く見られる現象だ。名大の吉田教授らと積水化学工業の研究チームは、これまでの研究から、コンクリーションを人工的に発生させるコンクリーション化剤「CONSEED」の開発に成功している。現在ではこのコンクリーション化剤を用いたさまざまな実証試験や研究が進行中だ。
コンクリーション化剤には液体状や粒状のものがあり、それぞれ炭酸イオンを放出する。一方、コンクリートにはカルシウム分が含まれているため、炭酸イオンとカルシウムイオンが結合して炭酸カルシウムが形成される。そこで研究チームは今回、この特性に着目。施工段階でセメント系材料に粒状コンクリーション化剤を混合することで、コンクリート内でのコンクリーションを促し、炭酸カルシウムによってひび割れを自己充填し水密性を高める技術の開発を目指したという。
イタリアのローマにあるパンテオンは、火山灰、石灰、火山岩、海水を混ぜた「ローマンコンクリート」と称される材料を用いて建造された。研究チームによればこれは、コンクリーションと類似した材料であり、約2000年前に建造されたにもかかわらず、現在でもひび割れのない健全な状態を保っている驚異的な建物だ。
また自然界のコンクリーションが数百万年以上前の地層から発見されていることから、長い年月に耐えうる強固さがわかる。このように、こうしたコンクリーションの原理をコンクリートに応用することで、パンテオンのような強固な構造物を建設できるだけでなく、ひび割れを自己充填して水密性を高め、将来的に超長期間の耐久性を持つコンクリート構造物を建設が可能になる。
今回の実証試験では、セメントにコンクリーション化剤を混ぜた供試体を製作し、1か月間水中養生が行われた。供試体には、あらかじめ微細なひび割れを人工的に多く発生させていたが、ひび割れに炭酸カルシウムが充填されていることが確認された。
水中養生の前後に圧縮強度試験を行った結果、コンクリーションによって強度は当初に比べて1.5倍以上となることが確かめられたとのこと。また、人工的に多孔質(空隙が多い)にした供試体の上面に液体状コンクリーション化剤を塗布し、3か月水中養生後の透水性も測定したところ、透水性も養生前に比べて大幅に改善されることがわかった。
日本は、放射性廃棄物を安全に地下処分するという重大な課題を抱えている。今回の技術をこの分野に利用することで、将来的に、ひび割れの発生を抑制した安全な地下処分などの建設に大きく貢献することが期待されるとする。
しかし、コンクリーション化技術を放射性廃棄物の処分問題に適用するには、まだ課題が残る。コンクリートの緻密化だけでなく、地下処分坑道周辺の岩盤も緻密化する必要があるからだ。そのためには、コンクリート中のコンクリーション化剤に含まれるイオンを岩盤中に放出させる技術が不可欠だとなる。安藤ハザマはこれらの技術を低コストで適用することを目指すと共に、原子力分野だけでなく、老朽化が進むインフラをはじめとする建設分野にも広く貢献できるよう、さらなる研究開発を進めていくとしている。





