日立製作所は9月4日、今後の運用拡大が期待されるドローンなどの次世代エアモビリティに対し、突風や強風などの突発的な気象変化による機体の挙動を再現できる新たなモデリング技術を開発したことを発表した。
エアモビリティの安定運用に貢献する新技術
物流量の増加や重要インフラの保守・管理における人手不足など、社会インフラ維持に関する問題が深刻化する近年では、ドローンや“空飛ぶクルマ”などといった次世代エアモビリティが、重要インフラの点検や物流、さらには災害復旧の現場などで活用され始めている。ただ一方で、小型ドローンなどは強風や突風など気象状況の影響を受けやすく、事前に機体ごとの挙動や飛行特性を把握することが難しいため、運行停止や機体破損のリスクが残されていたとのこと。特に都市部のビル密集エリアや山間部などでは、従来の運行管理技術だけでは十分な対応ができていなかったという。
そうした背景を受け、ドローンの安全な運用に貢献するドローンソリューションを提供する日立は、これまで培った知見に加え、気象や通信環境などさまざまな環境情報をデジタル化することでリスクを管理し、より安全なエアモビリティの運用を実現するモビリティ管制基盤「Digital Road」を開発してきた。そして今般同社は、さらなる飛行リスク算出の高精度化に向け、耐風性能を測定し機体応答をモデル化することで、機体ごとの挙動を再現できるモデリング技術を開発したとする。
今回発表された新モデリング技術は、“機体応答のモデル化技術”と“機体応答モデルの高精度化技術”の2つの特徴を有する。このうち前者は、突風などの急変する風況下における安定飛行の実現に貢献するもの。風の影響を受けたドローンは、姿勢変化を相殺し機体の位置を維持するためのフィードバック制御を行うが、急に風が弱まると制御のタイムラグにより過剰な力が働き、機体が元の位置からずれ姿勢制御も困難になるため、衝突や墜落のリスクにつながるという。さらにこうした挙動やリスクの表れ方は、機体の種類や飛行特性により異なることから、今回は“繰り返し突風”に着目し、風洞実験とモーションキャプチャによる計測データをもとにして、機体応答をモデル化する技術が開発された。
同モデルの開発では、あらかじめ実機を用いて繰り返し突風下での機体ごとの移動量や姿勢変化を計測し、得られたデータから風力・揚力・重力などを考慮した空力解析を行って、応答モデルを生成。同モデルは飛行ルート上の気象状況を模擬した解析に用いることで、事前に安全性を高精度で検証できるとする。さらにこの技術では、実機を用いて応答モデルを構築するため、さまざまな機体や荷物搭載時などの条件にも柔軟に対応可能で、多種多様な運用形態に合わせた飛行経路選定や運用効率化に貢献するとしている。
一方で機体応答モデルの高精度化に向けては、デジタル空間内で機体挙動解析を行い、フィジカル空間で計測したデータと比較することで、骨良くした機体応答モデルの性能を高精度で検証する技術を開発したとのこと。フィジカル空間で計測された繰り返し突風時の機体の実挙動と、デジタル空間の機体応答モデルによる挙動の比較を通じて、各パラメータの差分を算出することで、同一の挙動となるよう応答モデルをチューニングするという。なお日立によると、同技術により、繰り返し突風下での機体位置変動を約90%の精度で検証可能になり、これまで困難だった飛行前の気象状況と機体応答モデルを用いた安全性の確認を、デジタル空間内で実行できるとした。
日立は、これまで開発してきた技術を基盤としてエアモビリティの運行状況や機体データをデジタルデータとして収集・蓄積・管理する仕組みを構築するとともに、AIの活用も組み合わせることで、エアモビリティの運行管理や安全性の向上、さらに自動運行などの高度サービス提供にもつなげていくとする。そして将来的には、都市部での利用に加え、ダムや水道設備、河川、橋、線路、高速道路など、幅広い重要社会インフラの効率的な管理を実現し、環境・幸福・経済成長が調和する“ハーモナイズドソサエティ”の実現に貢献するとしている。
