AI革命は、電気抵抗という見えない壁に直面しています。AIがますます高い演算能力を求める中、半導体業界は対応策として垂直方向に構築を進め、1平方ミリメートルあたりの演算能力を高める高密度な3Dアーキテクチャを開発しています。

しかし、この垂直スケーリングは前例のない技術的課題を生み出します。これらの構造を通るすべての電気接続は原子レベルで完璧でなければならず、そうでなければAIの性能が壊滅的に低下します。

この記事では下記のポイントに焦点をあてていきます。

  • AIの進化が、3Dアーキテクチャにおける電気抵抗により妨げられる可能性
  • 低抵抗で性能を向上させる、画期的な材料モリブデン

AI半導体チップ製造におけるアドバンスド3Dインテグレーションとメタライゼーションの障壁

従来のメタライゼーション技術は物理的限界に達しつつあります。

従来の半導体チップ設計では、金属を誘電体にエッチングされた構造に堆積することで電気経路を形成していました。この方法では、金属と周囲の材料の不要な相互作用を防ぐために、例えば窒化チタン(TiN)などのバリア層が必要でした。

しかし、これらのバリア層は電気抵抗を増加させます。単純な半導体チップでは許容されるものの、信号が最大1,000層のNANDを通過する必要がある3Dアーキテクチャでは、これは根本的な障害となります。

デバイスの微細化による配線幅の縮小は、平均自由行程(電子が衝突するまでに移動できる距離)が短い新材料の必要性を高めており、これにより、配線長に適合した低抵抗の実現が可能となります。

演算需要の急増がこの課題をさらに深刻化させています。最適でない接続や余分なバリア層は、性能のボトルネックや熱管理の課題を生み出し、AIシステム全体の能力を低下させます。

AI半導体アーキテクチャを革新するモリブデン

Lam Research(ラムリサーチ)は、メタライゼーション技術において数十年にわたり業界の変革を牽引してきました。タングステンの原子層堆積(ALD)技術により、平面型から3D NANDメモリへの革命的な移行を実現しました。

現在、デバイスの微細化が進む中、ラムリサーチはモリブデン(Mo)による新たな転換を推進しています。

モリブデンは、平均自由行程が短いため、限られた空間に最適な材料です。さらに、タングステンなど他の金属と異なり、接着層やバリア層(TiNなど)を必要としないため、製造プロセスが簡素化され、全体の抵抗が大幅に低減されます。

このモリブデンへの移行は、2000年代初頭のアルミニウムから銅へのインターコネクトの移行に匹敵する歴史的な転換点です。

AI時代の半導体に対応するALD技術

モリブデンの利点を解説してきましたが、材料選定だけでは不十分です。ラムリサーチの最新技術であるALTUS Haloは、原子レベルのエンジニアリングと実用的な製造ソリューションの融合を実現し、各用途に特化しています。

  • 3D NAND:高度なALD技術と精密なウェハ温度制御により、ボイドフリーの横方向かつバリアレスの埋め込みを実現
  • DRAM:選択的かつ均一な埋め込み能力により、メタライゼーションの革新を推進
  • ロジック:熱およびプラズマALDオプションと統合型インタフェース洗浄プロセスを提供
  • ALTUS Halo

    最先端ICにおけるモリブデン導入の課題に対応するために設計されたALTUS Halo

AI演算技術を支える原子レベルのエンジニアリング

可能性は材料選定や製造プロセスを超えて広がります。

ラムリサーチの堆積技術と結晶構造制御の進歩により、3D NANDのワードラインからアドバンスドロジックの配線技術、DRAM構造まで、すべての最先端用途に対するモリブデンインテグレーションが可能になります。

ALDの初期原子層は、インタフェースのエンジニアリングとその後の膜成長において重要であり、材料の特性を決定するテンプレートとなります。

ALTUS Haloのクアッドステーションモジュール(QSM)アーキテクチャは、各ステーションで異なる温度、プロセスステップ、化学処理を実行できる柔軟性により、最高の生産性と最先端の埋め込みプロセスを実現します。

メモリとロジックにおける半導体業界の変革

半導体業界は重要な岐路に立っています。データ集約型のAIアプリケーションは、メモリとロジック技術の大幅な進化を求めています。

次世代デバイスでは、メタライゼーションにおいて前例のない精度が必要とされ、わずかな抵抗や熱性能の改善がシステム全体の能力に大きな影響を与えます。

ALTUS Haloのような革新的な技術を通じて、ラムリサーチはNAND、DRAM、ロジックにわたる根本的な転換を実現してきました。こうした新たな技術アプローチは、半導体業界が物理と化学の限界に挑む中、AIコンピューティングの未来を形づくる一助となると考えています。

本記事はLam Researchが自社のブログに掲載した記事「Breaking Through AI’s Invisible Barrier With Molybdenum」を翻訳・改編したものとなります