先般、PCI Express 8.0(PCIe 8.0)に関するアップデートをお届けしたが、その際に筆者が推察として書いた「Laneあたりの配線数を倍増させるのではないか?」の答え合わせをする機会に恵まれた。8月11日、オンラインの形でPCI-SIG ChairmanであるAl Yanes氏(Photo01)とミーティングできたので、詳細などを聞いてみた模様をお届けしたい。

  • 顔を合わせるのは久々のYanes氏

    Photo01:顔を合わせるのは久々のYanes氏。「もう歳(61)なので、海外取材辞めたんだ。辛くて」(筆者)、「判る。俺も62になったので長距離移動は辛い」(Yanes氏)と言った会話が交わされたのはご愛敬といったところか

PCI Express 8.0の帯域幅はどう倍増させるのか?

まずは答え合わせ。「速度据え置きでLaneあたりの配線数を倍増させたのではないかと考えているのだが、正しい?」という質問に対して同氏は、「違う。配線そのものは7.0から変わらない」という回答であった。

それを踏まえて、「ということは信号速度を倍増させるのか?」という問いに対しては、「その通り。128GT/secを目指す」という衝撃的な回答があった。

それは本当に可能なのかとの問いに対しては、「可能だと考えている。挑戦的な課題ではあるが、我々にはまだ3年間の猶予がある。例えば(より挿入損失の少ない)新しいコネクタや、電気特性の改善などで実現できるのではないかと考えている」(同)と新たな技術を導入することで実現できる可能性があるとする。

そうなると、現状は有機材料ベースのPCB(プリント基板)が使われているが、ガラスベースのPCBが必須になる可能性もあるが、その点については「そこまでは判らない。ただPCBの材質は継続的に向上しており、しかも量産効果でコストが下がりつつある」とする、投げっぱなしジャーマン的な返答をいただいた。

ちなみに「Opticalを考慮という話だが、それはシャーシ内の配線のOpticalも想定しているという意味か?」と確認したところ「シャーシ内はElectricalになると思う。Opticalは(シャーシ内利用には)高コストすぎる。Opticalはラック内のシャーシ間接続など、今のOcuLink的な使い方になると思う」との返事であった。ちなみに「どの位の距離までカバーする計画なのか?」を確認したところ「判らない」という返事であった。Yanes氏個人では100m程度だと思うが、公式なコメントは差し控えたいという返事であった。

Opticalに関してもう1つ判明したことがある。「現在はベンダー独自のPCIe Optical Cableが多数存在するが、あるベンダーは850nmのVCSELにプラスチックMMFを、別のベンダーは1310nmのEMLにガラスベースのSMFという具合に、利用する波長帯や媒体がまちまちになっている。こうしたものをPCI-SIGでは標準化する計画はあるのか? それとも、単に速度規定のみであって物理規定はベンダーに任せるのか?」と確認したところ、「それについてはSam Kocsis氏(Amphenol、Cabling Work Group Chair)が答えを持っているかもしれないが、私には判らない。現在彼らは1つのソリューションを利用するか、複数のソリューションを組み合わせるかの議論をしている最中だ」との事であった。

12VHPWRコネクタについて

このほか、「最近もまだ12VHPWRコネクタを使ったらコネクタが溶けたといった話や、GPUボードが発火したといった騒ぎが続いている。根本的には12Vで50Aもの電流を流すのが無茶なのであって、コンシューマ向けも48Vに移行すべきだと思うのだが、48VHPWRコネクタに関して何か動きなどはないか?」という話も聞いてみたが、「まったくない。2年前のクリスマスに一度騒ぎになったあとは何も話題になっていない。48Vに関しても、まったくリクエストなどは上がっておらず、取締役会でも議題に挙がっていない」との事であった。

現状としては、NVIDIAだけが12VHPWRコネクタを採用しているわけで、NVIDIAが何か方針を変えない限りPCI-SIGとしてできる事は何もないという事だろう。

ということで短い時間ではあったが有益な情報を得ることが出来た。しかし、PCIe 7.0でも受信側のイコライザーを相当強化しなければならなかったのに、PCIe 8.0では速度倍増である。どういう形に落ち着くのかはまだ判らないが、かなりの茨の道であることは間違いなさそうである。

加えて言えば、現状標準化された100GT/secの電気信号は200G EthernetのPluggable Transceiver ModuleのASICとModuleの間の接続が一番一般的だが、結構なエラー訂正(Read-Solomon FECを採用)を行う必要がある。もしLight FEC+FLITだけで100GT/secを超える電気信号の安定伝送が可能になったら、多方面への影響はかなりなものになりそうであり、今後の動向を見守る必要があるだろう。あるいはちょっと前盛り上がったのに、昨今急速に盛り下がり始めたGlass Interposerが再び脚光を浴びるのだろうか?