新潟大学は、アルマ望遠鏡による天の川銀河の外縁部(銀河中心から約4万4,000光年以上)の星形成領域の観測で、これまで知られていなかった新しい原始星を発見。この原始星には、南北方向に双極的な高速度の分子ガスの放射「アウトフロー」に加え、より高速な「ジェット」が付随していることも明らかにしたと、7月29日に発表した。
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(左下)今回観測対象とされた天の川銀河外縁部の星形成領域Sh2-283の赤外線3色合成画像(赤:2.16μm・緑:1.65μm・青:1.22μm、UKIDSSサーベイより)。(右)一酸化炭素でトレースされたアウトフロー(グレー)とジェット(等高線)。緑の星印は原始星の位置を、十字はジェットの弾丸構造の位置が示されている。矢印と等高線の色(赤と青)は、アウトフローとジェットの放射方向が示されている(赤:地球から遠ざかる方向、青:地球に近づく方向)
(C)R. Hurt/NASA/JPL-Caltech/ESO
(出所:新大ニュースリリースPDF)
同成果は、新大大学院 自然科学研究科の池田達紀大学院生、新大 理学部の下西隆准教授、新大 創生学部の金子紘之特任准教授、国立天文台の泉奈都子特任助教らの共同研究チームによるもの。詳細は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal」に掲載された。
星は、きわめて低温の星間ガスや星間塵が集積した分子雲から誕生する。生まれたばかりの原始星は、成長過程で角運動量が過剰になることを抑制するため、両極方向から分子ガスを噴き出すアウトフローを伴う。アウトフローの中には、秒速50km(時速18万km)を超える高速なものもある。
アウトフローよりも高速で指向性が高い流れがジェットだ。なかには、まるで弾丸のように間欠的に放出されることもある。両現象共にその領域で星が誕生している兆候であり、誕生間もない原始星に伴うそれらを調べることは、星の成長過程を解明する上で重要だ。
人間が居住する地域に都会、郊外、地方など、場所によって人口や建物の密集具合などに違いがあるように、天の川銀河にも、星がきわめて高密度に密集する中心部(バルジ)、太陽系があり星の間隔が適度な中間域(バルジと外縁部との間の領域)、そして星間ガスや星間塵などが少ない外縁部に大別される。
天の川銀河の円盤部の半径は5万〜6万5,000光年ほどと見積もられており、太陽系は銀河中心から約2万6,000光年に位置する(研究により諸説あり)。外縁部は、銀河中心から約4万4,000光年以上離れた領域のことであり、太陽系近傍と比べて炭素や酸素などの元素存在比が少ないことが特徴だ。
このような環境は、天の川銀河の形成初期や宇宙初期の誕生間もない原始銀河などの環境に類似していると考えられている。つまり、このような環境下での星や惑星の形成過程が太陽系近傍と同じか否かを調べることは、宇宙史を通した星・惑星形成過程の普遍性を探る上で重要だ。
そこで研究チームは今回、アルマ望遠鏡を用いて、天の川銀河中心から約5万光年離れた外縁部に存在する5つの星形成領域「Sh2-283」と「NOMF05-16/19/23/63」を観測することにした。
観測の結果、Sh2-283領域で誕生間もない原始星が発見された。さらに、検出された一酸化炭素や一酸化ケイ素などの分子輝線の空間分布と速度構造を解析した結果、その中心部から南北方向に向けて秒速20km(時速7万2,000km)程度のアウトフローが噴出していることも判明した。
加えて、アウトフローよりもさらに高速で指向性の高い、秒速70km(時速25万2,000km)ほどのジェットも検出された。アウトフローとジェットは共に明確な放射構造を示し、ジェットには間欠的な放射を示す弾丸構造も確認された。天の川銀河外縁部で、ここまで明確な放射構造を持つアウトフローとジェットが検出されたのは今回が初となる。また今回の観測では、NOMF05-16/23/63の3領域でもアウトフローを伴う原始星が4つ発見された。
次に、今回発見されたアウトフローとジェットの物理的性質や放射構造が、太陽系近傍の原始星のそれらと比較された。その結果、両者の物理的・構造的性質が非常に類似していることが判明。外縁部は星間ガスや星間塵が少なく、星が誕生しにくいと考えられていた。しかしこの発見は、外縁部のような特殊な領域でも、星形成の初期過程が太陽系近傍のような天の川銀河の内側領域と類似していることを示唆しているとのこと。
研究チームは、今後もアルマ望遠鏡などを用いて、外縁部における星形成活動探査を継続することにより、太陽系近傍とは大きく異なる環境における星・惑星形成過程の詳細な様子が明らかになることが期待されるとしている。