OKIとEfinixは7月22日、Efinix製のFPGAに関するデザインサービスおよび搭載AI機器の設計・生産サービスにおいて提携したことを発表。2027年度の売り上げ年間10億円を目指し、医療機器市場をはじめとする顧客基盤の拡大に向けて協業を開始することを明らかにした。
EfinixのFPGAが強みとする“革新的アプローチ”とは?
FPGA(Field Programmable Gate Array)は、製造後に論理回路を変更できる集積回路で、プログラムの柔軟性が高く、高速でのデータ処理が可能な点を特徴とする。特に昨今では、顧客ニーズの多様化に伴って電子部品に求められる性能も多岐にわたっており、設計変更によって幅広い要求に対応できるFPGAの搭載が広がっている。
そんな中、独自のアーキテクチャを用いたFPGA開発で存在感を強めているのが、Efinixだ。RISC-Vプロセッサ内蔵FPGAを提供する同社の「Quantum」アーキテクチャは、ロジック・機能・配線の役割を1つのセルに集約し、ハイブリッドに切り替えられるのが強み。従来はロジックセルと配線機能を固定比率で配置する必要があったのに対し、Quantumアーキテクチャではより高効率でフレキシブルな設計が可能になるため、FPGAの大幅な小型化や低消費電力化を実現するという。
同社日本法人のエフィニックスで代表を務める中西郁雄氏によると、Efinixのハイエンド製品である「Titanium FPGA」は、業界で広く採用される競合製品に比べても、同等以上あるいは高いコア性能を発揮する一方で、スタティック電力・ダイナミック電力のいずれも低減しており、低消費電力かつ高性能なデバイスを実現するとのこと。現在ではサーマルカメラをはじめとする産業機器の領域を筆頭に、小型化の強みを活かして民生機器や自動車関連機器への搭載が増加しているといい、またデバイスの小型化に対するニーズが急速に高まる医療機器分野においても、実採用が広がっているという。
しかし現在では、FPGAの論理回路設計や搭載機器の設計・生産におけるノウハウや知見を持つ技術者が少なく、導入が思うように広がっていない点が課題とのこと。また市場での認知度向上を広げたいという狙いもあり、半導体メーカーをはじめとしたさまざまな企業とのパートナーシップを広げているといい、今般は日本国内における顧客基盤の拡大も見据え、OKIとの提携に至ったとしている。
医療機器を筆頭にFPGAデバイスの幅広い展開を目指すOKI
OKIは現在、設計から製造、信頼性試験までを担う“ものづくり総合サービス”を特徴とするEMS事業を展開している。20年以上にわたる歴史を有する同事業は、これまで培われてきたOKI独自の豊富なIPや、設計・開発・実装・量産までの幅広いサービス体制を活用したワンストップサービスが強み。またFPGAの論理回路設計についても多くの実績を重ねており、さまざまなノウハウ・知見を保有しているとする。
そして今回のEfinixとの提携では、同社のデザインパートナーにOKIが正式に名を連ね、Titanium FPGAをはじめとする製品のデザインから、搭載されるAI機器の設計・試作・量産までをワンストップで行うEMSサービスを展開していくとのこと。FPGA開発の初期段階から量産までを一括してOKIとして担うことで、設計の段階から量産に最適化された手法を検討できるとともに、顧客としても開発・生産を委託するパートナーを集約できるため、コミュニケーションコストや手戻りの削減、および開発期間の短縮につながるとしている。
なおOKIとしてはまず、Efinixとの提携を経て医療機器業界へのサービス提供に注力するという。医療現場では、特に中小規模の医療機関において機器導入における初期コストやサイズの大きさが障壁となっていることから、低コストかつ小型なポータブル医療機器へのニーズが高まっている。こうした領域では、小型・低消費電力ながら高い性能を発揮するFPGAが特に有効で、また発熱性能も抑えられるため冷却構造が簡素化でき、静音・軽量化による快適性向上にも貢献できるとする。
ただし今後は、半導体製造装置市場をはじめ幅広い領域の顧客へとサービスを広げていくことを想定しているとし、実績を重ねていく中で市場での存在感を強め、さまざまな顧客企業における製品開発の短納期化・高度化に貢献していくとのこと。OKIは2027年度までに、量産などのEMSサービスを含む全体での売り上げを年間10億円まで伸長させることを目指すといい、Efinixとしても国内の顧客拡大を目指すとしている。