PFASフリーに対応したArF液浸レジストを開発

富士フイルムは7月15日、環境配慮型の半導体材料として、有機フッ素化合物(ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物)の総称であるPFASを一切使わないネガ型ArF液浸レジストを開発したことを発表した。

PFASは、自然界で分解されにくく、種類によっては人体や生態系への影響が懸念されており、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)やPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)など、すでに一部の製造や輸入が禁止されているものもある。また、欧米が先行する形で、PFASを包括的に規制対象とする検討が進められつつあり、半導体製造においてもPFASフリー化を求めるニーズが出てきている。

こうした市場のニーズに合わせる形で同社も半導体材料のPFASフリー化を推進してきており、2024年にはPFASフリーのナノインプリント向けレジストを発売している。ArF液浸レジストの場合、回路パターンの描画の際に、高い反応効率を得ることを目的としてPFASが用いられてきたほか、液浸プロセス特有のウェハ上に水滴が残る(水残り)によるレジスト膜への浸透やレジスト素材の溶出を防ぐためにもPFASが用いられてきた。

従来レジストと同等以上の性能を確認

今回、同社では銀塩写真の研究開発で培った機能性分子の設計技術に加え、フォトレジストなどの半導体材料開発で培った分子設計技術や有機合成技術、レジストの処方技術、解析技術などを活用することで、回路パターンの形成における優れた酸反応効率や、先端のArF液浸露光時の水残りを低減する高い撥水性を実現し、バラつきの少ない微細な回路パターンを形成することができるPFASフリーのネガ型ArF液浸レジストの開発に成功したとする。

  • ArF液浸レジストにおけるPFASの役割

    ArF液浸レジストにおけるPFASの役割 (出所:富士フイルム発表資料、以下すべて同様)

実際、imecとともに開発したレジストの評価を行ったところ、線幅45nm、ピッチ90nmのラインスペースに対し、従来のPFAS含有ArF液浸レジストと同等以上のリソグラフィ性能を達成できることや、imecによる28nmプロセス採用ロジックの金属配線の評価でも、すべてのテストパターンにおいて、既存レジストと同等あるいはそれ以上の電気特性を示すことを確認し、高い歩留まりと高スループットで金属配線を形成できることが実証されたという。

  • PFASフリーのネガ型ArF液浸レジスト
  • PFASフリーのネガ型ArF液浸レジスト
  • 今回開発されたPFASフリーのネガ型ArF液浸レジストの概要

なお、すでにPFASフリーのネガ型ArF液浸レジストは顧客での評価が進められているとのことで、同社ではそうした評価を経て、早期の販売を目指したいとしているほか、技術的にKrFやEUV向けレジストにも転用可能としており、そうしたほかのレジストもPFASフリー化を目指したいともしている。