ディスクリート/アナログ半導体のTSCが日本への投資を加速
ディスクリートやアナログ半導体を手掛けるTaiwan Semiconductor(TSC)は6月18日、日本市場への取り組みに関する説明会を開催。7月に名古屋オフィスを開設すること、ならびにデータセンターや自動車で需要が高まっている48V電源などへの対応が可能な80V/100V耐圧のMOSFETを日本市場に投入することを明らかにした。
同社は1979年に台湾で創業。ダイオードの製造・販売から事業をスタートさせ、近年はMOSFETやパワーマネジメントIC(PMIC)なども手掛けるようになってきた。また、2018年にはonsemiからTVS(Transient Voltage Suppressor)事業を買収した(元々はonsemiが買収したFairchild Semiconductorの事業)ほか、SiCショットキーダイオードの研究開発などを含め、事業ポートフォリオの拡充も図ってきており、2025年にはダイオードやTVSダイオードの拡充に加え、低電圧や高耐圧をはじめとする500製品ほどを市場に投入する計画だという。
そんな同社がターゲットとする産業分野別の売上高構成としては、車載55%、産業/テレコムが15%、コンシューマが16%、パワーマネジメントが6%、ライティングが2%、そしてその他が6%としており、車載と産業機器分野で実に売り上げの7割を占める規模となっている。
また、国・地域別に売上高比率を見ると、米国は10%だが、欧州は22%、中国が44%、ROAP(Rest Of Asia Pacific)が24%となっており、アジア圏だけで7割近いシェアを獲得している。
7月に名古屋事務所の開設へ
同社が日本法人を設立したのは2003年。これまで20年以上にわたって、主にダイオードの販売を自動車業界を中心に行ってきたという。2024年に同社の日本法人であるタイワン・セミコンダクター・ジャパンのカントリーディレクターに就任した佐藤正信氏によると、日本の売り上げの8割が自動車関連からによるもので、全体の売り上げの9割以上がダイオードの売り上げによるものであり、国内のメジャーな自動車ティア1に採用されている実績があるという。
そんな同社が2025年7月に名古屋に事務所を開設し、自動車業界とのコネクション強化を目指していくという。そのため、従来のダイオードのみならず、スプリットゲートトレンチ構造を採用する自社開発のMOSFET「PerFET」の80Vおよび100V耐圧品の国内展開も積極的に推進していくとする。
自動車/産業分野の48Vニーズに対応するMOSFETを日本市場に投入
同製品シリーズは、欧州の自動車分野の顧客(中国含む)の声を聞き入れる形で開発された車載MOSFETで、オン抵抗の低減などを実現しているほか、スイッチング特性の高速化によるチップの小型化も実現しつつ、AEC-Q101に準拠し、車載ニーズに対応している。現在、40V、80V、100V耐圧品が提供されているが、将来的には60Vおよび150V品の提供も計画しているという。
今回、同社では日本市場に向けて80Vおよび100V品の投入を行った。主なターゲットはマイルドハイブリッドの48Vシステムならびに、データセンターを中心とした産業分野における48V直流電源システムとしており、日本の自動車メーカーの欧州向けモデルや電気自動車、AIデータセンターニーズなどを背景に採用の促進を図っていきたいとしている。この取り組みにより将来的には、現在のダイオードに偏る売り上げ構成をMOSFETが50%を占める規模にまで成長させたいとする。
また、同MOSFETは欧州顧客のニーズなどを踏まえて開発されたものとなるが、佐藤氏は日本市場においてもFAEや品質・監査などのサポート体制の充実を図るのと同時に、日本の顧客からの要望を聞いて、それを台湾の開発チームに伝える形で新製品に結び付けていきたいともしている。Taiwan Semiconductorのプロダクトマーケティング担当バイスプレジデントを務めるサム・ワン(Sam Wang)氏も、「TSCの売り上げの70%を占める車載/産業分野で強みを持っている日本への投資は重要な意味を持つ。日本市場の顧客の成長を助けることがTSCの成長につながる」と、日本を重視する発言をしており、今後も日本における人材確保などを含めた投資を継続していくことを強調していた。