アイルランド政府産業開発庁(IDA Ireland)は、同国の新たな国家半導体戦略「シリコンアイランド」が、企業・観光・雇用大臣であるPeter Burke氏によって正式発表されたことを5月29日(日本時間)に明らかにした。
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(左から)Tyndall 国立研究所 理事会会長 Denis Doyle氏、企業・観光・雇用大臣のPeter Burke氏、Tyndall 国立研究所 CEO William Scanlon、アイルランド政府産業開発庁 企業技術部門のシニアVP Anne-Marie Tierney Le-Roux
シリコンアイランドは、欧州半導体法と「デジタル化の10年間」(Digital Decade)と連携しながら、アイルランドの半導体産業の成長に向けたロードマップを示したもの。専門性の高い仕事の創出や、大規模投資の誘致、最先端技術分野におけるアイルランドのリーダーシップ強化を通じて、同国が欧州の半導体分野において、中核的存在としての地位を確立することをめざす。また、政府の重要な公約の実現にもつながる取り組みとのこと。
同戦略の主な目標は以下のとおり。
- 地方への大規模な産業投資
- 次世代の高性能半導体を製造する最先端工場(1拠点)
- 安定供給が求められる汎用半導体を製造する工場(2拠点)
- 複数の半導体チップを一つにまとめる高度パッケージング工場(1拠点)
- スタートアップやスピンアウト企業の支援
資金調達や事業化支援の提供 - 研究開発能力の強化
国内外の協働を促進し、オープンなエコシステムを構築 - アイルランドの国際的なプロモーション
半導体分野における中核拠点としての地位を確立 - 人材戦略の基盤整備
未来のスキル需要に対応した人材パイプラインの形成
Peter Burke氏によれば、アイルランドは半導体を“次なる大きなチャンス”として捉えており、Tyndall国立研究所によるEUパイロットライン3件への参加に対して、アイルランドとEUから合計7,000万ユーロ以上の資金を確保。さらに、欧州半導体法に基づく国家コンピテンスセンタ「I-C3」を設立し、アナログデバイセズや14のEU加盟国とともに、重要プロジェクト「マイクロエレクトロニクス分野のIPCEI」にも参画している。シリコンアイランド戦略で示した各施策は、業界主導の「半導体諮問評議会」によって推進されるとのこと。
アイルランド 企業・観光・雇用大臣 Peter Burke氏のコメント
私たちは今、次なる成長分野である半導体産業に注力しています。アイルランドにはすでに130社を超える国内外の企業、2万人の雇用、年間135億ユーロの輸出という強固な半導体基盤があります。これに加えて適切な支援があれば、その可能性をさらに広げることができると確信しています。
2040年までに、アイルランドでは最大34,500人の新たな半導体関連の雇用を創出できる可能性があります。「シリコンアイランド」戦略は、産業界、学術機関、政府、研究機関などとの意見交換や協議を通じて策定されました。戦略では半導体分野のエコシステム拡大、将来を見据えた人材育成、高度な製造、設計、研究開発などの分野にて、新たな機会獲得に重点が置かれています。また、この戦略は半導体産業をイノベーションとデジタル成長を支える重要な基盤と位置づけています。
Tyndall 国立研究所 William Scanlon教授のコメント
本戦略の発表と、半導体産業およびそのエコシステムに対するアイルランド政府の支援姿勢と取り組みへの意欲を心より歓迎します。Tyndallは国家の半導体研究機関として、共同研究とイノベーション、人材育成を通じて本戦略の実現に貢献できることを誇りに思います。