世界トップ10の達成に意欲 第一三共が抗がん剤で急成長

売上高が倍の武田と時価総額で互角

「2030年までにオンコロジー(がん領域)でグローバルトップ10は確実に達成できるのではと考えている。さらに第6期中期経営計画ではグローバルトップ5を目指そうという声も上がっている」――。こう手応えを語るのは第一三共社長兼CEOの奥澤宏幸氏。

 同社の25年3月期の売上高に当たる売上収益は1兆8862億円。26年3月期は2兆円になる見込みだ。原動力は抗がん剤「エンハーツ」だ。25年3月期の売上高のうちの約3割はエンハーツが占める。同薬の販売地域の拡大と適応症の拡大で26年3月期は7615億円と前期比17%増を予測する。

 乳がん、胃がん、肺がんの各適応症において新規患者シェアで50%以上を維持し、首位の座を固めている。エンハーツは抗体薬物複合体(ADC)という技術で開発された薬剤。ADCは古く日の当たらなかった化学合成の技術で海外のメガファーマは手を引いていたが、05年に経営統合した第一製薬と三共の強みを磨いたADCには高い効果と副作用リスクの低減を両立できると考えて開発に注力した。

 エンハーツに続くADCの2製品目となる「ダトロウエイ」も「24年12月以降、日本、米国、欧州において承認を取得した」(同)だけに投資家の期待値は大きい。時価総額では中外製薬が14兆円超と国内トップだが、2位陣営として第一三共は約6.8兆円と売上高では倍以上の規模を誇る武田薬品工業と互角の勝負を繰り広げている。

 それでも米製薬大手のイーライ・リリーの時価総額は150兆円規模。その中でADC技術に代わる新たな創薬技術を導き出せるか。第一三共の技術力が試されるのはこれからだ。

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