日本科学未来館は4月23日から、DJのような操作で量子コンピュータを学べるという「量子コンピュータ・ディスコ」など、新たにふたつの常設展示を一般公開している。同館は「未来にむけた壮大な研究開発の最前線を楽しみながら体感できる展示」とアピールしている。

  • 「量子コンピュータ・ディスコ」と「未読の宇宙」の空間イメージ

新しい展示を楽しめるのは、同館の3階と5階の常設展示ゾーン。量子コンピュータ・ディスコでは、音楽を選びフロアに流すDJのような操作で量子プログラミングを体感するなど、量子コンピュータのしくみを楽しく学べるという。もうひとつは、巨大な観測・実験装置を駆使し、研究者たちがどのように宇宙を読み解こうとしているのかを体感できる展示「未読の宇宙」。

所在地は東京都江東区青海2-3-6。入館料は大人630円、18歳以下210円、未就学児無料。開館時間は10時~17時で、入館券の購入・受付は16時30分まで。なお、火曜日と年末年始(12月28日〜1月1日)は休館となる。祝日や春夏冬休み期間などは、火曜日であっても開館する場合もある。

  • 「量子コンピュータ・ディスコ」の外観

直観的に楽しみながら量子コンピュータを理解していく量子コンピュータ・ディスコでは、前述のようにDJ風の操作で量子プログラミングを体感できるほか、量子コンピュータの成り立ちや研究の歴史、最新の開発なども基礎から紹介。さらに最新の研究開発の成果として、超伝導量子コンピュータに用いられる144 量子ビットの集積回路チップを、国内で初めて一般公開している。

  • ゾーン2「ダンスフロア」の様子

  • 国内初公開の量子ビットチップ

エントランスで来場者を出迎えるのは、鈴木真海子氏による作詞と、同氏・ryo takahashi氏の両名による作曲、鈴木氏による歌唱でおくる「量子コンピュータのうた」。「重ね合わせ」や「もつれ」など、量子コンピュータのキーワードをちりばめたラップが、量子の不思議な世界にいざなう。

量子計算は、楽譜に音符を並べるように、演算を行う「ゲート」を置きながら正解に手探りで近づいていくような方法。展示ではゲートを操作し、「重ね合わせ」や「位相」、「もつれ」、「測定」という量子の性質を用いた計算方法を、DJが音楽を聴き比べて選びフロアに流すという一連の流れを通して理解できるようにした。

ダンスフロアの音楽体験には、「CHA-LA HEAD-CHA-LA」、「ドラゴンクエスト 序曲」、「残酷な天使のテーゼ」、「September」、「パッヘルベルのカノン」、「One More Time」といった、一度は聴いたことのある名曲からアニメソングゲーム音楽まで、身近な名曲を多数用意。「ひとつずつ選択肢を計算する今のコンピュータとはまったく違う、量子コンピュータの『重ね合わせ』の計算パワーを感じられる」としている。

「未読の宇宙」では、実際の観測・実験データをもとに制作した迫力ある映像がとり囲む展示空間の中で、さまざまな波長の光で宇宙をとらえる多波長観測、ニュートリノ観測、重力波の観測、加速器実験という、宇宙をとらえる4つの先端研究に体験装置を通して触れられる。

  • 「未読の宇宙」内部の様子

最初に来館者を迎えるのは、宮沢賢治の「春と修羅・序」の一節で、約100年前に書かれた作品で、素粒子の世界にも通じる豊かなイメージを感じさせるという。壁面から聞こえる朗読は、俳優・池松壮亮氏と、モデル・歌手の甲田益也子氏が担当した。

  • 「未読の宇宙」プロローグ

見どころのひとつが、アップデートした人気展示「霧箱」。宇宙から降り注ぐ高エネルギーの粒子や、大気に含まれる自然放射線の軌跡をみることができるもので、従来からファンの多かった霧箱の窓のサイズを約4倍にひろげ、宇宙から届く宇宙線(ミュー粒子)の軌跡をより観測しやすくしたという。

いずれもアカデミアの専門家による監修を受け、コンテンツ制作には多数の企業・個人が携わっており、変わったところでは量子コンピュータ・ディスコゾーンに大阪大学レゴ部によるレゴ ブロック模型を展示しているほか、未読の宇宙ゾーンの展示を通して浮かんだ疑問や感想を、生成AIと自由に語り合えるという対話型展示ではQosmoがシステム開発とデザインを担当している。

  • 「ニュートリノ観測」の体験装置