米トランプ大統領が半導体を一度は「相互関税」の対象から除外したが、近い将来、半導体や製造装置に高関税を課す可能性があるとされる。そうした米国に輸入される半導体関連製品に関税が課された場合、米国の半導体企業がどのような影響を受けるのかについて、米Semiconductor Intelligence(SI)が考察を公開した。
中国から米国への半導体輸入は3%ほど
2024年に米国がどの国から半導体を輸入しているかを見てみると、64%がマレーシア、台湾、タイ、ベトナムからで、中国からは3%ほどである。中国製半導体の多くはすでに電子機器に搭載された形で米国に輸入されているためである。
これらの4か国は、半導体の組み立て・試験を行う後工程の拠点を多く有している地域で、SEMIによれば、世界の後工程拠点の70%が中国、台湾、東南アジアに点在しているという。
米国の主要IDMも後工程工場のほとんどは米国外にあるほか、NVIDIAやAMDなどの先端プロセスを活用する米国ファブレスは、前工程、後工程ともにTSMC(TSMCでは後工程施設を「Advanced Backend Fab」と呼称)を利用することが多い。
後工程は人件費の安いアジアが有利
このため米国企業が自社半導体を米国外から米国へ輸入しても関税が課せられることになる。TSMCは米アリゾナ州にて前工程工場の建設・拡充を進めているほか、将来的には2棟の後工程工場の建設を計画しているが、その時期は明確にはされていない。
関税回避に向けて米国内に後工程工場を建設・稼働させることが考えられるが、こうした施設の建設には相当の時間と費用が掛かるため、直近の解決にはつながらない。最近のIDMおよびOSATの後工程工場の建設計画を見ても、建設には2~3年ほどかかる見通しで、費用も40億ドルを超す可能性がある。
OSATのAmkorとIntegraが米国での工場建設を表明しているが、このうちカンザス州で進められているIntegraのプロジェクトは遅延しているほか、Intelのポーランドでの計画も少なくとも2年の遅延が見込まれている。
こうした欧米での建設にかかる平均推定コストは30億ドルほどで、平均雇用者数は1900人ほど。一方、アジアでの建設計画の平均推定コストは8億4000万ドルで、平均雇用者数は3500人ほどで、人件費の安いアジアが有利であることが示されている。
半導体の原産地はどこになるのか?
SIのこれらの見解はあくまで後工程の場所が関税の対象となる原産地という見方だが、4月11日、中国の半導体業会団体「中国半導体行業協会(CSIA)」が会員企業向けに半導体の原産地の判定基準が、中国税関総署(日本の財務省関税局に相当)の規定改定により、前工程の処理が行われた国となるとの通達を出した模様である。
この動きを踏まえると、米国政府も中国のこの政策を真似て米国で前工程が行われた半導体は米国製とみなして関税をかけないという可能性がでてきたとも言える。
なお、米国商務省は現在、この辺のサプライチェーンの実態についての調査を進めており、関係者からのパブリックコメントを求めている。