東京理科大学ら6機関でつくるチームが開発した、“ガンダムカラー”の小型自律分散型環境センサー「TEM」(TSL Environment Monitor)が、スペースX(SpaceX)のFalcon 9ロケットで打ち上げられた。国際宇宙ステーションに輸送された後、船内の空気環境を測定する軌道上実証を行う予定だという。
TEMは、東京理科大学や高砂熱学工業、大和大学ほか6機関からなる「TEAM SPACE LIFE」(TSL)でつくりあげたもの。バンダイナムコグループが進める「ガンダムオープンイノベーション」の公認プロジェクトとして支援を受け、東京理科大学 スペースシステム創造研究センターが主導して装置を開発。国際宇宙ステーション(ISS)の搭載機器としての安全性や信頼性を確保しつつ、ガンダムを想起させるユニークなデザインも施したのが大きな特徴だ。
東京・北の丸公園の科学技術館で2024年に開催された企画展「GUNDAM NEXT FUTURE SCIENCE展」でも同センサーが“宇宙時代につながるテクノロジー”のひとつとして紹介されており、今回ISSで正式に使われる機材として宇宙へ飛び立った。
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TEMの外観イメージは、東京・北の丸公園の科学技術館で2024年に開催された企画展「GUNDAM NEXT FUTURE SCIENCE展」でも登場していた
(撮影:大塚実氏)
(C)創通・サンライズ
TEMは、米フロリダ州・ケネディ宇宙センターから日本時間4月21日17時15分に打ち上げられたFalcon 9ロケットのドラゴン補給船に搭載されており、5月中旬にも実験を2回実施する予定。ISSの日本実験棟「きぼう」に設置され、空気環境のデータを取得してこれを基礎データとし、空気環境モデルの精度を上げることで、空気の流れをより正確に予測することをめざす。ガンダムの劇中に登場する宇宙機やスペースコロニーの実現にもつながる技術ともいえる。
実験完了後は地上へ帰還予定で、今回の成果をフィードバックし、ソフトウェアをアップデートした上で、2025年度中にも追加で2台を軌道上へ送り、再び実証実験を行う計画だ。
センサーは本体と、単3形電池6本を収める電池ボックスで構成しており、その間をハーネスでつなぐ構造。上面のふたつの開口部のうち、中央に二酸化炭素センサー、隣にカメラモジュールを装備。側面に開口部を設け、ここから入ってくる空気でにおいや温湿度を計測する仕組みだ。ISS側とは独立した電源で動作し、設置や移動もしやすくしている。
本体ケースはアルミ製で、一部パーツにはガンダムをイメージした赤色と青色をアルマイト処理で着色。突起部を除く外形寸法85×55×35mm(幅×奥行き×高さ)と、本体サイズはコンパクトにまとめた。
内部には、ARMプロセッサ搭載のシングルボードコンピュータ「Raspberry Pi Zero W」とカメラモジュール「Raspberry Pi Camera Module」を搭載。このカメラはセンサー本体の位置を調べるために使い、ロボット掃除機などで活用されている、撮影画像から位置を推定する技術「VSLAM」によって、cmオーダーの精度で位置特定を可能にしている。
計測機器としては、理研計器によるNDIR(非分散型赤外線)式の二酸化炭素センサー「IRR-0433」(分解能20ppm、最大10,000ppmまで検出可能)、アロマビットによるQCM(水晶振動子)型のにおいセンサー「5Q-SSM」、独Bosch Sensortecの温湿度センサー「BME280」を採用。センサー本体の位置を調べるために、加速度・角速度・磁方位を計測できるBosch Sensortecの9軸センサー「BMX055」も搭載し、慣性計測装置(IMU)として本体の物理的な動きを把握する。
電池ボックス側にはUSBケーブルで接続した5GHz無線LANモジュールを備え、ISS内のサーバーPCに計測データをワイヤレスで送信できるようにしている。電源をオンにすると、自動でネットワーク接続し、10秒に1回程度の間隔で計測して内蔵SDカードへの記録と、無線LAN経由のデータ送信を実行。一連の動作は全て自律的に行われ、宇宙飛行士の作業負荷を最低限に抑えているとのこと。
地上では自然対流によって空気が循環するが、ISSのような微小重力環境では密度の違いによる熱対流が起きにくく、呼吸で排出した二酸化炭素が宇宙飛行士の周りに滞留しやすいという問題がある。また、船内にはさまざまな装置があり、それらが“障害物”となって空気流に影響を与える可能性もあるが、船内の実際の空気の流れについては不明なところも多い。
今回打ち上げた2台のTEMは、1台を壁面に固定し、もう1台は移動しながら複数箇所で計測を行う予定。高砂熱学工業が中心となって行った数値シミュレーションの予測と、複数箇所で実際に取得した計測データを比較し、シミュレーションの理論(=モデル)の改良と精度向上によって、空気環境の時間的・空間的な分布状況をより正確に把握して、環境の改善につなげられるようにする。
同センサーのプロジェクトは、さまざまな企業や大学による産学連携によって推進されており、各者の役割は以下の通り。
- 東京理科大学 スペースシステム創造研究センター(SSI):全体とりまとめ
- 理研計器:超小型宇宙環境センサー
- 有人宇宙システム(JAMSS):宇宙対応、宇宙実証、宇宙環境での活用
- 高砂熱学工業:環境モデル化、制御技術
- 国際医療福祉大学 宇宙医学研究会:環境の健康影響評価
- NTTデータSBC:データ処理、地上展開
- バンダイナムコ研究所:センサーの外観デザイン





