トランプ関税が自動車にも発動 米メーカーにも影響必至

鉄鋼や造船にも波及

「彼はビジネスマンだから、たくさんのパンチを繰り出してくる。その中からどう〝抜け道〟を探り当てるかではないか」─。ある財界人は米国のトランプ大統領の戦略を分析する。だが、自動車業界で〝抜け道〟はなさそうだ。日本の自動車も関税の例外にはならなかった。

 影響を色濃く受けるとみられるのがマツダとSUBARUだ。マツダは年間22万台、SUBARUは同29万台を日本から北米に輸出。米国販売のそれぞれ52%、44%を占める。マツダは「ビジネスに与える影響を評価し、対応策を講じる準備を進めていく」とコメントする。

 更にメキシコやカナダで生産して米国に輸出する台数が多い日産自動車やホンダにも影響は及ぶ。抜本的な対策は米国内で生産工場を建設することだが、新工場の建設には4年前後かかる。そのときはトランプ政権ではないかもしれない。新工場の建設は現実的ではない。

 さらに関税は部品にも課される。そこには米国で販売好調なハイブリッド車などに使われるエンジンも含まれている。ただ、米国販売車のうち米国製のエンジンは19%に過ぎず、ドイツが24%、日本が23%、韓国が8%と半分以上を占める。

 一連の関税によって米国内で販売される新車の価格は「数十万円から100万円レベルで上がる」(関係者)。トヨタ自動車は新車価格の値上げではなく原価低減で価格が上がらないようにするなど、地道な努力に力を入れる意欲を示す。

 別の関係者は次のように語る。「本当に米国製造業を守る気があるのか」。新車の価格が上がれば当然売れなくなり、米国販売の比率が高い米フォード(全体の52%)やGM(同45%)に影響が出てくるからだ。その点、トヨタは23%と留めている。

 加えて、鉄鋼・アルミ関税も発動。日本製鉄によるUSスチール買収も進展していない中、高機能な鋼材などは米国では十分な量を造れず、日本からの輸入に依存、トランプ氏が再興を狙う造船業にもマイナス影響が出そうだ。一方で「今が株価の底。年内には持ち上がる」(証券会社関係者)という見方もある。

 いずれにせよ、当面は米国景気の後退や株価の乱高下など混迷は避けられない。

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