
米トランプ政権の関税措置を巡る対米交渉で、加藤勝信財務相がベッセント米財務長官との協議を担うことになった。とはいえ、加藤氏の担当は為替に関する協議にとどまり、全体の担当閣僚は赤澤亮正経済再生相が指名された。
財務省内では「ベッセント氏のカウンターパートは加藤大臣なのに」(幹部)と残念がる声もあるが、交渉結果次第では日本経済に多大な影響が及び、政権の命運を左右する重要政策だけに、石破茂首相と赤澤氏の強い信頼関係を踏まえれば、加藤氏の出番が限られるのは仕方がないということか。
4月9日の衆院財務金融委員会で加藤氏は、野党議員から強い姿勢で対米交渉に臨むよう求められたのに対し「国益の維持・増大の観点から対応する」と強調した。その後、トランプ氏が相互関税の上乗せ分を90日間停止すると発表したことを受け、10日午前の参院財務金融委員会で加藤氏は「前向きに受け止めている」と評価。ただ、金融市場は株価が乱高下するなど市場の動揺は収まっていない。
トランプ政権は中国に対する関税措置を強化し、米中対立は激化している。加藤氏は「米国の一挙手一投足でわが国の金融市場、資本市場にもいろいろ影響が出ている」と指摘。「今回の関税措置などの影響が国内経済、企業、国民の暮らしにどういう形で影響を与えるか。しっかり分析し、対応に万全を期したい」と強調した。
対米交渉の責任者となった赤澤氏だが、外交手腕は未知数で政府・与党内では不安視する向きもある。一方の加藤氏は、第2次安倍晋三政権下の官房副長官をはじめ主要閣僚を歴任。対米交渉で赤澤氏を支え、発信力を高められれば、存在感が増す好機となる。