富士経済は4月3日、パワー半導体市場の世界市場の動向に関する調査レポート「2025年版 次世代パワーデバイス関連市場の現状と将来展望」を発行したことを発表。同調査レポートでは、2025年のパワー半導体市場が3兆5285億円規模となるとする予測が示されているとする。
調査対象となっているのは、パワー半導体17品目、構成部材20品目、製造装置20品目で、同社では2024年に影響を受けた中国の景況悪化による民生機器や産業向けを中心とした在庫調整の影響が2025年後半に向けて解消され、2026年以降は成長が加速すると予測されるとするほか、長期的には自動車の電動化などによって需要が高まっていくことが期待されるとしており、2035年には2024年比で2.3倍の市場規模となる7兆7710億円まで成長することが予測されるとしている。
また、次世代パワー半導体として成長が期待されるSiCパワー半導体(SiC-SBD、SiC-FET、SiCパワーモジュール)については、トラクションインバータや急速充電インフラなどといった電気自動車(EV)向けが8割弱を占めており、2024年はEV販売の低迷、車載バッテリー価格の下落などの影響からシリコンパワー半導体からの置き換えがなかなか進まなかったとするが、自動車の電動化そのものは進んでおり、2025年の市場は前年比16.6%増の4558億円と予測。その後もEVにおける採用率が2024年の10%強から2035年には50%超まで進むほか、電力貯蔵システム(ESS:Energy Storage System)や太陽光発電用パワーコンディショナ、電鉄車両など自動車・電装分野以外での採用の本格化により、2025年の市場は2024年比7.4倍の2兆9034億円まで成長することが予測されるとする。
一方の次世代パワー半導体として成長が期待されるGaNパワー半導体については、2024年は、参入メーカーの設備投資に伴う量産化によって、価格低下が進んだことで最終製品での採用が小型化ニーズが高いAC-DCアダプタを中心にシリコンパワー半導体からの置き換えが進んだほか、サーバ電源の電力密度向上ニーズへの対応として採用が進んだとしており、2025年以降もオンボードチャージャーやLiDARなどの自動車・電装分野や産業用スイッチング電源、太陽光発電パワーコンディショナなどでの採用が増加していくことが期待されるため、2025年の市場規模は前年比60.7%増の580億円、その後も成長が続き、2025年には2024年比7.7倍の2787億円まで成長することが予測されるとしている。
また、日系メーカーを中心に実用化にむけた取り組みが進む酸化ガリウムについては、2026年ころから民生機器やサーバー電源など情報通信機器向けにSBDの本格的な生産が始まると予想されるほか、2030年前後に産業分野やエネルギー分野など高耐圧用途をターゲットにしたFETの生産が始まり、自動車・電装分野への採用が進むことことが期待されることから2035年には149億円の市場が形成されることが予測されるとする。
パワー半導体を製造するための鋼製部材市場については、2024年に中国企業による生産増加に伴い、SiCウェハがシリコンウェハを上回り、SiCウェハの価格低下が続いているとするほか、GaNウェハも成長が続いており、ウェハ全体として2025年は前年比15.2%増の3009億円まで拡大。SiCウェハの中国を中心とした堅調な需要の継続に加え、GaNウェハや酸化ガリウムウェハの4インチから6インチへの大口径化に伴う市場拡大の後押し効果などもあり、2035年には2024年比3.5倍増の9118億円まで拡大することが予測されるという。
また、前工程材料については、ウェハの薄化や回路パターンの形成にともなう需要が一定量あるが、欧米ならびに日本における需要が低迷しており、2025年についても前年比3.0%増の204億円に留まるとみられるとする。ただし、CMPのパッドやスラリがSiCをはじめとする硬質ウェハ対応に向けた開発などが進んでおり、実用化による市場拡大への期待と、SiCおよびGaNの需要拡大などを背景に2035年には2024年比54.0%増の305億円まで成長することが予測されるとする。一方の後工程についても、IGBTモジュールなどの需要減退から2024年は市場の伸びが鈍化したが、2025年はシンタリング接合材など新規材料の需要が比較的堅調であり、既存材料の需要停滞を下支えすることがが予想されることから、前年比6.0%増の2939億円へと成長。2035年についても、シンタリング接合材がSiCパワー半導体向けやパワーモジュールとヒートシンクの接合で採用が進んでいることから、SiCパワー半導体の成長とともに、はんだの代替材料として普及拡大が進むほか、絶縁・放熱基板のうち窒化ケイ素回路基板が、自動車・電装向けに伸びることが期待されるため、2024年比2.9倍の7985億円まで拡大することが予測されるとしている。
なお、2025年の製造装置市場については、2024年後半からのEV需要低迷に伴う自動車関連の設備投資の減速の影響から前年比5.0%減の7393億円に留まるとするが、中国におけるパワー半導体メーカーの補助金活用による新規設備投資や新興メーカーによる新工場建設などは続いているほか、自動車関連の設備投資の回復、SiCパワー半導体の大口径化(8インチ化)による投資増加などもあり、2027年以降に市場の再拡大が進むことが予想され、2035年には2024年比70.1%増の1兆3234億円まで拡大することが予想されるとしている。