
米ビッグスリーにも影響
「果たして保護政策で米国内の製造業が再興するのか」─。日本の製造業幹部は話す。
トランプ米大統領が掲げる関税政策に産業界が振り回されている。トランプ氏は3月4日に発動したカナダとメキシコを対象とした25%について、自由貿易協定「米国・メキシコ・カナダ協定」(USMCA)の基準に合う輸入品への適用を4月2日まで見送ることを決定した。他にも関税政策の対応が二転三転し、混乱が広がる中、企業からは「価格条件などを決められない」(大手商社)と悲鳴が上がる。
目下の関心事は自動車関税の行方だ。日系ではメキシコから米国への輸出が多い日産自動車やマツダが大きな影響を受けるとみられている。関税発動前に完成車を米国に輸送するなど、あの手この手を繰り出している。
そんな中で「異例の提携」(関係者)で関税を回避する動きも出てきた。ホンダが日本と中国から輸出していたハイブリッド車(HV)向け電池をトヨタ自動車が米国で建設中の新たな電池工場から調達する方針。過去、HVで火花を散らした両社だが、関税対応では手を組む。
一方で肝心の米国自動車メーカーの経営も厳しい。フォード・モーターはトランプ政権に関税の適用免除を要請。政権は経済への打撃を避けるため渋々受け入れた。しかし、米国自動車メーカーは稼ぎ頭のスポーツ用多目的車やピックアップトラックの多くをメキシコ、カナダ両国の工場から米国に輸入しているだけに、関税の恐怖が消えたわけではない。
トランプ氏は12日、米国に輸入される鉄鋼・アルミニウムに25%の追加関税を発動した。欧州連合(EU)は措置が不当だとして報復措置を発表。世界経済が減速する懸念がくすぶる。
日本も無傷でいられない。大統領報道官が日本のコメ関税が高いと名指しで批判するなど、どこに波及するか読めないからだ。また、保護政策で米国経済も影響を受ける。トランプ氏に振り回される状況はしばらく続きそうだ。