Space CompassとNTTドコモは、高度約20kmの成層圏を飛行する「HAPS」を経由し、スマートフォンでのLTEデータ通信の実証実験に成功したと3月3日に発表。高度18km以上を飛ぶ、小型固定翼タイプのHAPS機体を用いた試みとしては世界初の成功事例としている。
この実証実験は、地上のLTE基地局からの送信電波を、高度約20kmの成層圏を飛行するHAPS(High-Altitude Platform Station:高高度通信プラットフォーム)を経由して、地上のスマホに伝送するというもので、ケニア共和国ライキピアカウンティで2月に実施。AALTO HAPSが製造・運用する小型固定翼型の「Zephyr」を利用した。
具体的には、地上に設置したLTE基地局を地上ゲートウェイ局(HAPSと地上の通信ネットワークを中継する地上局)に接続し、HAPSに搭載した「非再生中継方式」と呼ばれる、電波を折り返す中継技術を活用した通信装置を経由して、地上のスマホと情報データを送受信した。
その結果、地上ゲートウェイ局からHAPSを中継したスマホへの通信(フォワードリンク)では、4.66Mbps以上のスループットを確認。さらに、成層圏を旋回するHAPSから一定のエリアに通信カバレッジを形成するために、地上の定点にビームの中心を向ける技術を実装し、HAPSで折り返される電波がスマホで正常に受信できることも地上の試験エリアで確認した。
HAPSとは、高度約20km上空の成層圏を長期間(数日〜数カ月)にわたり無着陸で飛行できる無人飛行体のこと。機体に中継器などを搭載し、機体設計にもよるが、直径100~200km程度のエリア化をめざす。これまでエリア化が困難であった空や海上をはじめ、過疎・中山間地域なども対象とすることが検討されている。なお、今回の実験で使われたZephyrは、無人航空機では最長となる64日間の滞空飛行を2022年に実現している。
前出の非再生中継方式とは、空を飛ぶHAPSには基地局装置を載せず、地上の基地局装置からの電波を折り返す中継機能をHAPSの機体に持たせる方式。基地局装置をHAPSに搭載する方式は「再生中継方式」と呼ぶ。
Space Compassとドコモは、この実験で得られた結果をもとに、HAPSの2026年における商用化に向けた開発を推進。空・海・宇宙などあらゆる場所への「超カバレッジ拡張」を実現する宇宙RAN(Radio Access Network)の開発に取り組む。