自動車用およびITや産業向け半導体の需要弱含みが続く中、欧州の代表的半導体メーカーであるNXP SemiconductorsやSTMicroelectronics、Robert Boschなどで人員削減の準備が進められている模様である。海外の複数のメディアが各社それぞれの話題として伝えている。

世界半導体市場統計(WSTS)によると、2024年の半導体売上高を地域別に見ると、生成AI需要に沸く北米は前年比44.8%増となった一方、欧州は同8.1%減となるなど、欧州の半導体業界の苦戦が見て取れる。

各社1000人を超す規模でのリストラの可能性

NXPの2024年通期売上高は前年同期比5%減の126億1000万ドルであった。同社は、欧米の貿易関係が閣僚級で協議される中、高まる市場圧力により、全世界で最大1800人の人員削減を行う可能性があることを明らかにしたとオランダメディアが報じている。オランダに主要拠点を置く同社は、短期的には潜在的な貿易制限に十分に備えることができないことを認めているという。

このようなリストラは貿易戦争の可能性に対する懸念だけによるものではなく、悪化する欧州市場の状況にも影響されている。NXPは、全世界で3万4000人以上の従業員を抱えているが、人員削減により世界中で数百の職種に影響が出ることになるという。同社の広報担当者は、事業の主軸である車載半導体の需要減に対応する必要があるほか、輸入関税による価格上昇により、需要が抑制される可能性があると指摘している。特に、手掛けるさまざまなネットワーク機器向け半導体の中には経済変動に敏感なものがあるという。

STMicroも車載や産業部門の需要減退への対応策として、早期退職と自然減により全体の約6%に相当する3000人の従業員の削減を検討している模様だと米国メディアが伝えている。ただし、情報提供者によると、最終決定には至っておらず、削減規模はまだ検討中だという。

パワー半導体を提供するRobert Boschは2024年11月に、今後数年間で、全従業員の1%に相当する最大5500人の従業員を削減することを明らかにしている。電気自動車(EV)の低迷による顧客である欧州自動車各社の業績が悪化、運転支援システムも予想ほど需要がなく、今後もこの傾向が継続すると判断したためだという。

Infineon Technologiesの2025会計年度第1四半期(2024年10-12月期)の連結売上高は前四半期比13%減の34億2400万ユーロで、4つの事業部すべてで需要が減少したと同社は説明している。すでに同社は2024年8月に1400人の人員削減と1400人の配置転換を発表しているが、さらなるリストラの可能性を欧州半導体関係者は指摘している。

このほか、Intelは大規模なコスト削減策の一環として、欧州へのファウンドリ工場進出を延期したが、ドイツの半導体関係者の多くが建設再開を絶望的とみている。イスラエルのメディアが、Intelの人員削減の終了時期が明確化されていないと指摘している中、海外では3月末までにカリフォルニアのフォルサムキャンパスで58のポジションを削減する計画が報じられている。同キャンパスの不動産は2024年11月に売却し、一部をリースバックする計画が発表されたが、すでに1000人以上の従業員もレイオフされ、今後、その数がさらに増えるとも言われている。Intelの全世界の従業員は2022年末以降、2万3000人ほど減少しているが、これには2024年の約1万6000人の計画が含まれている。