OpenAIの共同創業者でCEOを務めるSam Altman(サム・アルトマン)氏は、AGI(Artificial General Intelligence:汎用人工知能)の推進者だ。だが、AGIのメリットが広く行き渡るためには、場合によっては介入が必要と考えているようだ。
アルトマン氏が考えるAIの経済学
アルトマン氏は「われわれの使命はAGIが人類全体に利益をもたらす、これを確実にすること」とした後、AIの経済学について次の3の見解を示した。
1. AIモデルの知能は、訓練と実行に使用されるリソースの対数にほぼ等しい
2. 特定レベルのAIを使用するコストは1年ごとに約10分の1に下がり、価格低下は使用量の大幅な増加につながる
3. 知能をリニアに増加させることによる社会経済的価値は、超指数関数的な性質を持つ
AIエージェントについても触れている。アルトマン氏が「重要になる」と予想するソフトウェアエンジニアリング分野では、トップ企業の数年分の経験を積んだエンジニアと同等の能力を持つAIエージェントを利用できる可能性があるとの予想を示す。
一方で「新しいアイデアを生み出すことはなく、人間による監督と指示を必要とする」と限界も予想した。同氏は「そのような比較的若手(ジュニア)レベルの仮想の同僚が1000人、100万人規模で存在する世界を想像してほしい。さらに、この状況が(ソフトウェアエンジニアリングだけでなく)あらゆる知識労働分野で実現する可能性がある」との見解を示している。
AGIが社会に与えるインパクトと課題
AGIの社会への影響と課題について、アルトマン氏は長期的な変化として以下を予想している。
- 科学の進歩が加速する
- 商品の価格が下落する
- 土地などの本質的に限られたリソースの価格は上昇する
- 主体性、意志力、決断力が極めて価値のあるものとなる
- 適応力と回復力が重要なスキルになる
そして同氏は「AGIは人間の意志力に対する史上最大のレバレッジとなり、個々の人々がこれまで以上に大きな影響力を持つことを可能にする」という。
重要なこととして、アルトマン氏は「AGIの実現が近づくにつれて個人の権限付与が重要になる。そして、もう1つの可能性として権威主義的な政府がAIを使用し、大規模な監視と自律性の喪失を通じて人々を支配する可能性がある」と警告している。
同氏が強調するのは、AGIの利益が広く分配されること。同氏は「技術が進歩すると、長期的には健康や経済の指標が平均して改善するものの、平均性の向上は技術が決定しているわけではない。新しいアイデアが必要かもしれない」とのことだ。
また、アルトマン氏は「資本と労働のバランスは簡単に崩れる可能性があり、早期の介入が必要かもしれない。2035年には2025年の全員に匹敵する」と意見を示している。
なお、同氏は脚注でMicrosoftとの関係に触れ「AGIという言葉を使うことで、Microsoftとの関係を定義するプロセスや定義を変更したり、解釈したりする意図はないことを明確にしておきたい」と記している。2月9日、自身のWebサイトのブログに「3つの観察」として綴っている。