AMDは12月10日、同社のアダプティブSoCシリーズ「Versal」を拡張し、新たにダイレクトRFサンプリングデータコンバータを搭載した「Versal RFシリーズ」を発表した。
同シリーズは、AMD direct RFデバイスの第5世代に位置づけられるもので、高解像度RFデータコンバータ、ハードIPのDSP計算ブロック、 DSP向けAIエンジンに加え、アダプティブSoCのプログラマブルロジックとArmサブシステムを、モノリシックに集積しており、正確な広帯域スペクトルの観測性と、サイズ、重量、消費電力(SWaP)を最適化した設計とすることで、現行のAMD Zynq UltraScale+ RFSoCデバイスに比べて最大19倍となる最大80TOPSのデジタル信号処理(DSP)性能を提供するという。
また、この4GSPSのFFT/iFFT 、チャネライザ、多相任意リサンプラー、そしてLDPCデコーダを含む特定のDSP機能は、専用のハードIPブロックで実装されており、これによりAMDのソフトロジック実装と比較して動的電力消費を最大80%削減することも可能とするという。
同製品は、主に航空宇宙および防衛(A&D)のRFシステムや計測機器(T&M)市場での利用を想定しており、高解像度のマルチチャネルRFコンバータと低遅延処理を使用することで、広帯域スペクトルの同時キャプチャと解析を可能にするほか、一体型で統合された高解像度(キャリブレーション付き14ビット) 、32GSPS、18GHz対応のRFアナログデジタルコンバータ(RF-ADC)は、フェーズドアレイレーダー、電磁スペクトル操作、信号諜報、軍用および衛星通信端末など、航空宇宙および防衛分野の重要な用途において、正確かつ柔軟で迅速な信号解析を提供するという。また、T&M分野向けとしては、Kuバンド対応の複数のRFチャネルを統合し、任意リサンプリングやスペクトル解析を可能としており、最大18GHzまでのダイレクトRFサンプリングと最大32GSPSに対応することで、複数チャネルで同時にマルチGHzのRF帯域幅をデジタル化することができるという。
なお、同シリーズのシリコンサンプルと評価キットは2025年第4四半期より提供が開始される予定で、量産出荷は2027年前半を予定しているが、同シリーズの開発ツールそのものはすでに利用可能だという。