富士フイルムは、熊本・菊陽町にある工場に約20億円を投じ、「CMPスラリー」と呼ばれる先端半導体材料の生産設備を増強。2025年1月に稼働予定で、生産能力を約3割拡大すると発表した。これにより、AI向け半導体の需要拡大に伴うアジアでの需要増に応える。

  • CMPスラリーの生産設備を導入する建屋の外観

CMP(Chemical Mechanical Polishing)スラリーは、硬さの異なる配線や絶縁膜が混在する半導体の表面を均一に平坦化する研磨剤で、市場では高い成長性が見込まれている材料だという。

富士フイルムは、先端半導体の製造工程に必要な銅配線用CMPスラリーにおいて世界で高いシェアを持ち、安定供給と品質要求に応えるため、CMPスラリーの現地生産強化を進めている。生産拠点は米国や台湾、韓国にあり、国内では2024年1月から熊本拠点で生産を開始した。

AI向け半導体の需要拡大に伴う、アジアでのCMPスラリーの需要増に応えるため、半導体材料事業の中核会社である富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズが約20億円を投じ、熊本拠点に銅配線用を含めたCMPスラリーの生産設備を増強。この設備投資によって、同拠点のCMPスラリーの生産能力を約3割拡大するとしている。

富士フイルムは、半導体製造の研磨工程で使われる材料として、CMPスラリーのほかにもポストCMPクリーナー(CMPスラリーによる研磨後、金属表面を保護しながら粒子や微量金属、有機残留物を洗浄するもの)を提供。同社では、連続する工程で使われる2つの材料の組み合わせ提案ができるという強みを生かし、顧客の課題解決と半導体のさらなる性能向上に寄与するとしている。

  • 熊本・菊陽町に立地する、富士フイルムの生産拠点