11月4日に行われた米大統領戦の結果、トランプ氏が再選を果たした。トランプ氏は過半数の270人を大きく上回る312人の選挙人を獲得するだけでなく、2016年と2020年を上回る獲得票数を記録するなど、開票作業が始まってみればトランプ氏の圧勝だった。それまでトランプvsハリスは大接戦とメディアで報じられてきたが、ハリス氏が獲得した選挙人は226人に留まり、民主党内部では歴史的敗北の原因はバイデン大統領がもっと早く選挙戦からの撤退を決めなかったからだとの批判も上がっている。議会でも上院は非改選を併せて共和党が過半数を占め、下院でも共和党が過半数を獲得してトリプルレッドとなるなど、トランプ氏にとっては理想的な環境が整いつつある。

トランプ政権による日本への影響

トランプ政権の再来により、日本企業は再び対応を迫られることになる。トランプ氏は中国製品に対して一律60%の関税を課し、その他の外国製品に対して10%から20%の関税を掛けると豪語しており、それはトランプ氏のマニフェストの1つであったことから、それは政権発足後に実行に移されていくことになろう。

トランプ氏は政権1期目の際、米国の対中貿易赤字を是正する目的で中国に対して関税制裁を次々に仕掛けていったが、政権2期目も貿易戦争においては中国を最大の標的にすることは間違いない。そして、トランプ氏が日本企業を中国のように敵対勢力と位置付ける可能性は低いが、上述のように諸外国からの輸入品という枠組みの中に日本も含まれ、その影響を回避することは難しいだろう。トランプ氏は自らをタリフマン(関税男)と自認し、ウクライナや中東での軍事的紛争は早期に終結させる姿勢だが、経済や貿易を主戦場とする紛争が激化することに迷いはない。すべてはアメリカファースト、そのためなら諸外国が懸念する保護主義などもトランプ氏にとっては関係ないのである。

また、日本企業との間で懸念があるとすれば、日本製鉄によるUSスチール買収問題だ。トランプ氏はそれを阻止するとの姿勢に徹しており、買収がスムーズに行くかどうかは別の話として、トランプ氏がこの問題を独自に深刻に受け止め、日本への不満や苛立ちを強めるようなことがあれば、同盟国であったとしても日本に対して独自の経済的圧力を示してくる可能性があろう。

トランプ政権は台湾半導体産業にどのような影響を及ぼすのか?

一方、トランプ政権の発足に対して懸念を抱いているのが台湾だろう。トランプ氏は、選挙戦の最中から台湾は防衛費をもっと増やすべきだ、台湾は米国から半導体産業を奪って儲けているなどと主張しており、バイデン政権下で強化された米台関係の結束が揺らいでいく可能性がある。トランプ氏が台湾軽視の姿勢を鮮明にすれば、中国がその隙を突いて台湾に対する軍事的圧力をこれまで以上に強化する恐れがある。5月に総統に就任した頼清徳氏は、就任演説の時から「台湾と中国は隷属しない」などと中国にとっては受け入れられない発言を繰り返しており、中国は台湾を包囲する大規模な軍事演習をすでに2回行っている。トランプ氏が台湾を軽視すれば、例えば中国が台湾周辺の海上を一斉に封鎖し、それによって台湾と諸外国との半導体貿易などが阻害される可能性がある。

TSMCが製造拠点として日本を重視している背景にもそれがあると見られており、トランプ政権がどれほど深く台湾問題に関与するかで、台湾の半導体産業の行方も左右されるだろう。