京セラは11月7日、自動運転車向けに光学カメラとLiDARの光軸を一致させて、1ユニットにまとめた「カメラ‐LiDARフュージョンセンサ」を開発したことを発表した。

  • 「カメラ‐LiDARフュージョンセンサ」
  • 「カメラ‐LiDARフュージョンセンサ」
  • 「カメラ‐LiDARフュージョンセンサ」
  • 「カメラ‐LiDARフュージョンセンサ」
  • 「カメラ‐LiDARフュージョンセンサ」

自動運転においては、走行中に障害物を正確に検知することを目的に、長距離かつ精度の高い3D情報を瞬時に取得できるLiDARが用いられているが、一方で物体が何であるのかなどを認識するために光学カメラも用いられており、今後の自動運転の高度化の実現にはそれらを組み合わせて活用することが期待されている。しかし、別々のユニットとして利用する場合、車体の別々の場所に設置されるため、得られるデータに視差が生じ、センサ間のキャリブレーションが必要となり、遅延が生じるといった課題のほか、距離が離れている物体の認識の場合、その視差の影響から、それぞれのセンサが同じものを認識しているのかの保証が難しいといった課題を抱えているという。

同社はこうした問題を解決することを目的に、京セラグループが保有するセラミックパッケージと半導体技術を活用した独自MEMSミラーや、カメラで培った光学技術、携帯電話で培った回路・制御技術、複合機・プリンタで培った光走査技術などのコア技術を融合させる形で、2017年よりLiDARと光学カメラの一体化を目指した開発を推進してきた。

中でも、独自の光学設計技術を活用することで、光学カメラとLiDARという2つのセンサデバイスを1つのユニットにおさめ(処理を担うECUはそれぞれ別に存在するが、同一ユニット内に収まっている)、光軸を一致させることに成功。この結果、キャリブレーションが不要になるなど、それぞれの検知結果を統合させるプロセスが容易になり、リアルタイムに光学カメラで取得した画像データとLiDARの距離(点群)データを統合して、高度な物体認識を図ることを可能としたとする。

  • 今回開発されたカメラ‐LiDARフュージョンセンサ

    左が従来開発品。右が今回開発されたカメラ‐LiDARフュージョンセンサ。従来開発品は上段がLiDARの送信、下段が光学カメラとLiDARの受光素子という構成だったが、カメラ‐LiDARフュージョンセンサの場合、光学カメラの受光側はフロントパネルのすぐ後ろ側にあり、ミラーで反射して取り込む方式となっているという

  • 開発品によるLiDARの画像

    左が開発品によるLiDARの画像、右が他社の高額なLiDARの画像

また、レーザー技術についても、複合機・プリンタなどの開発で培ってきた独自のレーザースキャンユニットの技術を応用することで、世界最高クラスとなる最高垂直分解能0.0045°(垂直15°で150ピクセル)を実現。これにより、70m先で5cmのビーム径を維持できるようになり、ボケのない高精度な高さ情報を出力することができるようになった結果、70m先のタイヤを安定して検知できるとするほか、100m先の30cmの落下物も検知することが可能になったとする。

  • カメラ‐LiDARフュージョンセンサの特徴
  • カメラ‐LiDARフュージョンセンサの特徴
  • カメラ‐LiDARフュージョンセンサの特徴
  • カメラ‐LiDARフュージョンセンサの特徴
  • カメラ‐LiDARフュージョンセンサの特徴 (資料提供:京セラ、以下すべてのスライド同様)

さらに、セラミックパッケージの製造・開発で培ってきた技術を応用した独自開発のMEMSミラーを採用することで、モーター式を上回る高解像度と、従来のMEMSミラーを上回る耐久性の両立を実現したとする。

  • 独自開発のMEMSミラー

    独自開発のMEMSミラー

なお、同社ではMEMSミラーから、光学系、電気回路、ソフトウェアまで自社開発で提供できるため、用途に合わせたカスタマイズが可能としており、用途に合わせる形で測定距離が短い(60~120m程度の)ショートモデルと(120~200m程度まで対応可能な)ロングモデルの2つもモデルを用意。2025年よりサンプル展開を、さまざまな分野での導入に向けて行っていきたいとしている。

  • ショートとロングの2つのモデルでの提供を予定

    ショートとロングの2つのモデルでの提供を予定している。ロングの方はLiDARのみでも可能だという