11月5日から10日までの6日間にわたって東京ビッグサイトにて開催されている「JIMTOF2024 第32回日本国際工作機械見本市」で、三菱電機は、「Automating the World - 絶えまない進化を、あなたのものづくりへ」をコンセプトとしたブースを出展。熟練者のノウハウを必要としない簡単なセットアップで、工作機械の異常や摩耗などを検知する加工診断ツール「NC MachiningAID」を初公開している。
独自AI技術「Maisart」搭載の最新加工機を紹介
ハードウェア・ソフトウェア・ネットワークと領域を問わずさまざまなFA(ファクトリーオートメーション)製品を展開する三菱電機は、“ものづくりの総合見本市”とも呼ばれるJIMTOFには毎度出展。今回は前出のコンセプトのもと、製品ライフサイクルへの価値提供拡大を達成するための製品や事例を紹介しているという。
特に昨今ものづくり現場における悩みの種となっているのが、労働力不足の問題だ。少子高齢化が深刻な社会課題となる中、製造業における人手・後継者不足の問題は切迫しており、特に長年培われたノウハウに依存した技術や作業の継承は喫緊の課題となっている。そこで今回のブースでは、熟練者不足の問題を解決するためのソリューションとして、三菱電機独自のAI技術ブランド「Maisart」を搭載した2つの加工機が展示されている。
緒高精度油加工液仕様ワイヤ放電加工機の「MX600」は、電子部品や自動車の駆動系など高い加工精度が要求される領域をターゲットに、長時間の稼働でも安定した精度での加工を実現する装置。直近の製品リニューアルにより、制御装置を最新の「D-CUBES」に置き換えるとともにMaisartも搭載することにより、操作性の向上はもちろん、より高品位かつ高精度な加工を安定的に実現するという。
また高精度型彫放電加工機「SV-Pシリーズ」もMaisartの搭載により加工精度が向上した製品の1つ。今回ブースに展示された「SV12P 半導体パッケージ仕様」では、非常に高い精度が必要な半導体部品への要求を満たすため高品位梨地面仕上回路を新たに開発し、高品位梨地面を実現したとする。また半導体封止金型専用の加工条件も搭載しており、加工ノウハウを有していない作業者でも簡単に高品位な加工面を実現できるとしている。
NC装置の異常検知を簡単かつ高精度に実現する「NC MachiningAID」
三菱電機のFA事業システム本部が重点成長事業としてNC(数値制御)装置については、工作機械メーカーとエンドユーザーそれぞれに向けて展示エリアを分け、幅広い製品群を紹介している。その中でエンドユーザー向け、特に量産段階における業務効率化ソリューションとして紹介されたのが、今回初公開となった加工診断ツール「NC MachiningAID」だ。
このツールは、工作機械の加工異常や工具摩耗、作業ミスなどを、リアルタイムで収集したNC装置の電流値から診断し検知するというもの。「工作機械工具摩耗診断」という製品を前身として、NC装置向けに機能をブラッシュアップしたという。
PC環境で使用可能な同製品は、追加のハードウェアを必要としない点が強みの1つで、Windowsが搭載されたNC装置であれば、そのPCにインストールするだけで使用が可能になるとする。「クレンジング機能」も搭載しており、エアカットと実加工を1度ずつ行う中での電流値の差異から診断を行うため、検知に用いるデータ量が削減され診断精度の向上にもつながるとした。そして、セットアップの容易さも重要な特徴だという。従来のIoT製品では取得データの活用に専門知識を有していたのに対し、NC MachiningAIDでは、エアカットおよび実加工1回ずつに加えて工具交換5回分の実加工を行うことで自動でしきい値を設定。これにより、マニュアル通りの設定をすれば工具摩耗や加工異常などがすぐに検知できるようになるとしている。
コスト・安全性のメリットを誇る金属3Dプリンタも展示
また、現在金属3Dプリンタとして主流であるパウダーベッド方式で用いる金属粉末に比べて非常に安価で、吸引などによる作業者の健康リスクもない市販ワイヤを用いた指向性エネルギー堆積(DED)方式を採用したワイヤ・レーザ金属3Dプリンタ「AZ600」も展示。ワイヤ放電加工機やレーザ加工機などで培われたノウハウを集結させることで、精密なワイヤ・レーザのリアルタイム制御技術を実現しているといい、グローバルで拡大中の需要に応える製品だという。
さらにブース内では、さまざまなDXソリューションや関係会社によるソフトウェア技術なども展開。三菱電機の担当者は、「常に顧客に寄り添い、ものづくりビジネスの拡大に役立てるよう努力を続けていく」としている。