ドコモグループの法人向け事業「ドコモビジネス」を手掛けるNTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)は10月10日~11日、展示イベント「docomo business Forum'24」を東京都内のホテルで開催中だ。

初日となる10日、基調講演に代表取締役社長の小島克重氏が登壇し、「驚きと感動のDX(デジタルトランスフォーメーション)」を生み出すための8つの注力領域を紹介した。

  • NTT Com 代表取締役社長 小島克重氏

    NTT Com 代表取締役社長 小島克重氏

驚きと感動のDXを生み出す3つの要素

小島氏はまず、驚きと感動のDXというキーワードについて、「皆様の期待に応え、さらにその期待を超えたDXを実現するという意味。事業運営の中でとても大切にしたいキーワード」だと紹介した。

ドコモビジネスというブランドが目指すのは、「すべてをつなぎ続けることで提供価値を高め、社会や産業を超える」ことだ。単に通信ネットワークをつなぐだけにとどまらず、ビジネス機会やテクノロジーなどを広義の意味でつなぐことで、豊かな日常の創出、経済の安定成長への貢献、安心・安全な社会への貢献、持続的な資源循環の未来の実現を目指すとしている。

顧客の期待を超える驚きと感動のDXを提供するためにNTT Comが重要としているのは「価値を進化させる先端テクノロジーの採用」「価値を創出するデータ活用」「価値を広げる戦略的な協業・連携」の3つの要素だ。

価値を進化させる先端テクノロジーの採用

同社は先端テクノロジーとして、小型で軽量なNTT版LLM(Large Language Models:大規模言語モデル)のtsuzumiや、液冷方式を標準装備するデータセンターサービスGreen Nexcenter、低遅延・大容量・低消費電力の特長を持つIOWNなど、NTTグループのテクノロジーを集結し、ソリューションとして提供する。これにより、これまでにない価値を届けるという。

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価値を創出するデータ活用

同社の強みでもある約1億アカウントのドコモデータ会員基盤をはじめ、さまざまな手段によるデータ収集と、それらのデータを安全に保管して流通させる技術をベースに、データ同士を掛け合わせた新しい価値の創出を支援する。

ドコモグループが持つ会員基盤や位置情報などと、パートナー企業らが持つ独自のデータを組み合わせることで、これまでにない質の高いマーケティングも実現可能だ。以前は検討できなかった切り口でのユーザー像や特性分析、未リーチ層への効果的なアプローチなどが期待できる。

NTT Comと西武ライオンズが提携した事例では、野球観戦に来場したファンクラブ会員のデータとドコモグループのデータを掛け合わせて、有効な広告やイベントにつながるなどの結果が出始めているそうだ。

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価値を広げる戦略的な協業・連携

東京大手町にオープンしたOPEN HUB Parkを起点として、同社は幅広い業界のパートナー企業との共創を図っている。OPEN HUB Parkには社内外から集まった専門家「カタリスト」が約900人在籍し、これまでに45万人のメルマガ会員を獲得。1000件ほどの共創案件を生み出している。小島氏は今後について、案件レベルではなく事業レベルでの戦略的な協業や提携を推進すると述べた。

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NTT Comが注力する8つの重点領域

続けて、小島氏は今後注力する重点領域を8つ挙げた。データ収集を支えるIoTをはじめ、サステナビリティに貢献するGX(グリーントランスフォーメーション)、ゼロトラストネットワークなどは、顧客のビジネス運営の基盤として展開する。

集めたデータに対しては生成AIやデータ活用ソリューションを適用する。さらにはデジタルBPOによって、経営課題や社会課題の解決に貢献するという。複数の業界のデータを集積して流通させるソリューション群を社会産業プラットフォームとして提供することで、広く経済活動に寄与するとのことだ。

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以下、8つの重点領域のポイントを紹介していく。

社会産業プラットフォーム

社会産業プラットフォームについては、今年8月に北海道を起点にさまざまな産業や地域の課題解決を目指す事業コンセプト「HOKKAIDO IOWN CAMPUS」を発表。NTTグループのIOWN技術を活用しながら人と街と産業をつなぎ合わせ、特に半導体産業を中心に地域創生や人材育成に取り組む。

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同社は他にも、スマートシティの実現に向けて「デジタル実装コミュニティ」を発足した。ここでは、建築現場に加えてビルそのものや街区までも含めたDXによって、より広い社会課題の解決を目指す。ビルごとに個別最適化されていた従来の建築現場ではなく、街づくりの構想から運用まで一気通貫でデジタルの利活用を最適化する仕組みを構築する。

地域創生

同社は10月10日に陸上養殖に関わる子会社の設立を発表した。新会社はAIやICTを用いた収益性の向上により、地域での雇用創出や観光資源の創出、環境保全などを通じて、持続可能な参加型の街づくりを支えるとしている。加えて、水産業の振興や魚食文化の啓発、地産地消の推進などにもつなげるという。

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総合インフラマネジメント事業「JCLaaS(ジェイクラース)」でも、地方創生に貢献する。人口減少とそれに伴う担い手不足が進む地方に対し、複数の民間企業が持つノウハウやアセットを持ち寄って社会インフラに関連する課題の解決を目指す。NTT Comはインフラに関わるデータを自治体やパートナー企業らと連携するためのソリューションを提供する。

中小企業DX支援

中小企業向けには、ICT領域をはじめ業務の課題解決をワンストップで支援する「ドコモビジネスパッケージ」を提供する。運輸業、製造業、建設業といった各業界向けに特化したパッケージに加えて、経理やマーケティングなど業界に共通した横断的なパッケージを計7つ展開している。今後もパッケージは追加予定だという。

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デジタルBPO / AI&データ活用

AIやデータ活用が進む時代に対応するデジタルBPOソリューションを強化するため、同社は7月にトランスコスモスとの業務提携を開始した。IT人材の不足やレガシーシステムの老朽化などの問題に対して、トランスコスモスが持つDX人材やノウハウとNTTのテクノロジーを組み合わせたソリューションによって解決を目指す。

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ゼロトラストネットワーク / グリーンICT

NTT Comが強みとするネットワーク事業においても、さらなるソリューションの強化を図る。ネットワーク活用の際には利用環境や目的に合わせた回線の手配やセキュリティ設計が必要だが、スピード感のある対応を可能とするために「docomo business RINK」を展開。クラウド型のセキュリティ機能とネットワークをパッケージ化して提供するため、迅速に安全なネットワークを活用可能だとしている。

また、今後はIoT活用の場面がさらに増えるとして、これに対応するためにビジネスモデル特許を取得したIoT機器のセキュリティ対策ソリューションを2025年度下期に提供開始予定だ。

「私たちは皆様の企業の経営基盤となるネットワークについても、より便利に、より早く、より安全に進化させていく」(小島氏)

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IoT

IoT事業は国内だけでなくグローバルでも展開を強化する。単につながるネットワークを提供するだけではなく、各業界の用途に適した管理プラットフォームやセキュリティソリューションも一体型で提供するという。その一例として、同社はBMWに対しコネクテッドIoTの提供を発表している。2027年までにIoT関連ソリューション全体で2500憶円規模のビジネスを目指すそうだ。

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GX

同社は持続可能な社会の実現にも貢献する。森林由来Jクレジット利用促すプラットフォーム森かちは、国内の森林クレジットの創出と流通の活性化を図る。住友林業と共同で手掛けるこのプラットフォームは、森林クレジットの創出者から審査機関、購入者のそれぞれの課題解決を支援するもので、質の高いクレジットの創出と透明性の高い流通を促進するとしている。

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