藤 豊・オークファン執行役員 グローバル事業推進室室長「中国との越境EC拡大に向け企業との協業を深める」

当社はITの力を活用して、世界のBtoB卸売市場のDX(テジタルトランスフォーメーション)化に取り組む企業です。

 現在、我々は中国市場での取り組みに力を入れています。そのきっかけは、2015年にDeNAからBtoBマーケットプレイス「NETSEA(ネッシー)」を買収したことに遡ります。

 当社は、日本でBtoBの卸売プラットフォームを手掛けている大手のうちの1社ですが、他社はまだ、中国市場には出ていません。

 我々が持つサプライヤー数千社、バイヤー50万社をマッチングするわけですが、そのデータを見ると、バイヤーの3割以上が外国系、しかも中華圏の方々が大半でした。データから見ても売る側にも買う側にも、日本製品への非常に強いニーズがあることがわかったのです。

 次に、では現実に中国市場に進出する上でのハードルは何かを考えた時に、まず浮かんだのが「決済」でした。外貨管理規制もあり、元から円に替えるのは大変なことです。

 カギとなったのは海南島でした。海南島は2025年までに島全体が自由貿易港になるとも言われており、「第2の香港」と期待されています。我々は元々、ここにBtoBの越境EC拠点を持っていました。

 昨今報じられているような不動産市場の苦境などもあり、先行きが懸念されていることも事実ですが、中国は人口増加、国の成長度合い、EC化率向上などには期待が持てます。中国のBtoBの輸出入拡大、DX化に、我々が持つテックの力が役に立つでしょうから、進出しない理由はないと考えました。

 23年には、中国浙江省義烏市にある世界最大級の卸売市場「義烏(イーウー)マーケット」の運営会社と業務提携を結びました。義烏自身が世界展開に目を向け、日本企業との提携の必要性を考えていたところに、我々の目指す方向性と合致したのです。

 24年3月に東京・馬喰町に義烏マーケットの商品を扱う常設展示会「日本東京義烏セレクション」を開設、24年8月には義烏市にある中国最大の雑貨卸売市場内に「日本国家館」を開設しました。日中それぞれの関係者に商品の質を見てもらう意味でも重要なリアル店舗です。

 決済についても、23年に中国の大手決済サービス「YeePay(易宝支付)」の運営会社と提携し、課題を解決しました。

 さらに、24年2月に大手複合企業である中国機械工業集団(国機集団)のグループ企業・国機海南発展と業務提携しました。中国の大手企業との提携で、彼らが持つ輸出手続きの処理、商品手配、物流手配、ファイナンスなど、様々な面が円滑化、強化されることが期待できます。

 ただ、中国とのビジネスにおいては、外交、安全保障上のリスクが指摘されていることも認識しています。しかし、外交関係で緊張が高まったとしても、貿易が著しく途絶える事例は多くないと見ています。その意味で、我々が日中間の輸出入のインフラを担っていく意義は大きいと考えています。

 中国という国は今も変貌し続けています。仕事で訪れると、街が成長し、変わっていくダイナミズムを肌で感じることができるのです。この国と仕事をしない選択肢はないなと感じる瞬間でもあります。

 中国のモノづくりの力は伸びており、日本製品も中国なしにはできませんが、まだ「ブランド力」に課題があります。その向上に貢献するのも、我々の役割ではないかと考えています。