
食料の安定確保
日本国内では今、米(コメ)不足と米価高騰が問題となっている。
賃金が上がっても、物価上昇が続き、インフレ〝圧力〟に人々の気持ちは抑圧され気味。
日本の食料自給率は38%と、G7(主要先進7か国)の中でも最低の数字。いかに食料を確保し、安定した価格で国民に提供していくかは重要な課題だ。
食料戦略をどう描くか─。 「日本のパンはおいしい」―─。インバウンドの人たちから、こう言われることが多い。それは、日本のパンづくりの技術もさることながら、小麦を安定調達し、品質(味)を確保する製粉業界の〝縁の下の力持ち〟的な努力があってのこと。
国内で消費される小麦のうち、国産小麦は約15%、残りの85%は海外からの輸入に頼っている。
小麦を巡る日米の信頼
製粉トップの日清製粉グループ本社は、米国、カナダ、豪州の三か国を中心に小麦を調達し、日本の消費者に届けている。
米国中西部は小麦の一大産地で、中西部産小麦は、太平洋岸にあるオレゴン州・ポートランド港に集められ、日本に輸出されるのだという。
同社社長・瀧原賢二さん(1966年生まれ)は若き頃、中西部モンタナ州に約10年駐在。地元の農家と様々な対話・協議をした瀧原さんは、「地元農業関係者との信頼づくりが大事ですね」と語る。
米国産小麦は、中国など他の国々にも販売されるが、日本との絆は強い。日米双方で長年の間で培った力強い信頼関係があるからだ。
農産物の生産は天候に左右され、豊作の時もあれば、不作の時もある。
日本はどのような状況でも、約束した購買量は必ず引き受けてきた。それに対し米国の農家は「日本は信頼できる」と、日本との間に信頼関係が築き上げられた。
「モンタナの地元農家さんも、自分たちは日本のために小麦をつくっているよと言ってくれるんです。そういう時は本当に嬉しいですね」と瀧原さん。
人と人の信頼、絆が国と国の対立を乗り越えていく素になる。